古典的シグナル伝達経路: SMAD経路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 16:27 UTC 版)
「TGF-β」の記事における「古典的シグナル伝達経路: SMAD経路」の解説
SmadはTGF-βファミリーシグナル伝達分子の細胞内シグナル伝達タンパク質であり、転写因子である。この経路は概念的には、JAK-STATシグナル伝達経路と類似している。JAK-STATシグナル伝達経路はサイトカイン受容体の活性化によって特徴づけられ、B細胞のクラススイッチ経路などに関与する。上述したように、TGF-βリガンドのTGF-β受容体への結合に伴ってII型受容体型キナーゼはI型受容体型キナーゼをリン酸化して活性化し、I型キナーゼ受容体はシグナル伝達カスケードを活性化する。Smadの場合、I型TGF-β受容体型キナーゼによってリン酸化されて活性化されたSmadは他のSmadと複合体を形成し、細胞核へ移行してさまざまなエフェクターの転写を誘導できるようになる。 より具体的には、活性化されたTGF-β複合体はII型TGF-β受容体に結合し、II型受容体はI型受容体をリクルートしてリン酸化する。その後、I型受容体はR-Smad(英語版)(receptor-regulated Smad)をリクルートしてリン酸化する。R-SmadはCo-Smad(common-partner SMAD)のSMAD4(英語版)と結合して複合体を形成する。この複合体は細胞核へ移行し、アポトーシスを開始するMAPK8(英語版)経路に関与するものなど、さまざまな遺伝子に対して転写因子として機能する。Smad経路はフィードバック阻害によって調節されている。SMAD6(英語版)とSMAD7(英語版)はI型受容体を遮断する可能性がある。また、SMAD3経路を介したTGF-β依存的シグナル伝達は後節で述べるTGF-βの阻害的機能の多くを担っていることが多くの証拠から示されており、発がんへの関与も示唆されている。 SmadはTGF-βによって調節される唯一のシグナル伝達経路ではない。非Smadシグナル伝達も並行して開始され、最終的にはSmadと協調的に機能するか、他の主要なシグナル伝達経路とクロストークする。中でも、ERK1/2、JNK、p38 MAPKを含むMAPKファミリーはTGF-βシグナル伝達に重要な役割を果たす。ERK1/2は上皮成長因子などの細胞分裂促進刺激によって誘導されるRaf-Ras-MEK1/2経路を介して活性化されるのに対し、JNKとp38 MAPKはストレス刺激によって活性化されたTAK1(英語版)(TGFβ-activated kinase 1)によって活性化されたMAPKキナーゼによって活性化される。
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