反インディアン・マスコット運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 19:20 UTC 版)
「ネイティブ・アメリカン」の記事における「反インディアン・マスコット運動」の解説
アメリカでは近年になって「人種差別である」とインディアン団体の抗議を受けるまで、大学や高校などがスポーツチームのマスコットにインディアンのキャラクターを採用することも珍しくなかった。プロスポーツ界でのインディアンをテーマにしたチーム名の使用は広く知られており、例えばクリーブランド・インディアンズのワフー酋長(Chief Wahoo)や、ワシントン・レッドスキンズなどがあるが、こういった「侮辱的なカリカチュア」は現在、インディアン権利団体にとって最も活発な抗議対象のひとつになっている。 最も初期の事例では、1970年の「スタンフォード大学でのマスコット抗議」がある。スタンフォード大学のフットボールチーム「インディアンズ」の、でたらめな衣装や踊りで応援するインディアン・マスコットの廃止を、同大学のインディアン学生達が申し入れたもので、リチャード・ライマン総長がこれを受け入れたために、白人の大学関係者側からは「なぜ廃止するんだ」と轟々たる非難が集まる論争となり、以後、こういった冒涜的なスポーツ・マスコットに対する廃止要求は全米に広がっていく嚆矢となった。ライマン総長はのちにこう語っている。「ブルドッグか虎のように、特定の少数民族すべてをマスコットにする権利が、我々のどこにあるだろうか?」 2005年8月、こうした「反インディアン・マスコット運動」の高まりを受け、全米大学体育協会 (NCAA)は、「敵意を持ち虐待的」に表現されたインディアンのマスコットの使用を、ポストシーズンのトーナメント以降禁止した。 これと併せて、「インディアンズ」や「ブレーブス」といったプロ野球チームで、白人の応援団による「羽飾りをつけ、太鼓を叩き、手斧型の応援バットを振り回す(手斧を振り回すような風俗はそもそもインディアンにはない)」といった応援が行われていることに対し、「侮辱的なカリカチュアである」として、1980年代からインディアン団体が猛抗議を続けている。 一方、ユタ州の「ユタ大学」はNCAAの決定を不服として、同大学の「ユテ族(UTE)」、「走るユテ族(Running Ute)」のチーム名を商標登録し、その見返りにユテ族学生に対し奨学金を支払うと約束した。しかし、同大学がこれを守らず、奨学金を払っていないとして、2008年、ユテ族学生たちが同大学内でデモ行進をするなど、抗議運動が高まりつつある。 スー族はノースダコタ州のノースダコタ大学ダートマス校のアイスホッケーチーム「戦うスー族(Fighting Sioux)」の名称撤廃を求めて、同大のスー族学生を中心に30年来の抗議運動を展開しているが、同校は2000年にこれを「伝統的な名である」として拒否し、全スー族と州をあげた大論争となっている。テキサス大学オースティン校のジャーナリズム教授ロバート・ジェンセンは、2003年にノースダコタ大で行った数多くの批判演説のなかで、「“野蛮人”トーマス・ジェファーソンやフランクリン・ルーズベルトこそが“戦うスー族”なのです。仮に第二次大戦でナチがアメリカに勝った世界があったとして、“戦うユダヤ人”というマスコット名が生まれ、伝統に従って存続しているとしたらどうでしょうか」とこれに抗議している。同チームのデタラメなインディアンマスコット類は一掃され、オジブワ族のデザイナー、ベネット・ブライアンによるロゴに置き換えられた。
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