去勢
『閹人あるいは無実のあかし』(澁澤龍彦『唐草物語』) シリア王が「妃ストラトニケーの長旅の護衛をせよ」と、美男のコムバボスに命ずる。コムバボスは「旅中の王妃と私の仲を、王は必ず疑うだろう。旅から帰ったら、私は殺されるだろう」と恐れ、旅に出る前に自らを去勢してしまった(*→〔箱〕3a)。別伝では、コムバボスと王妃は関係を持とうとした。緊張の余りコムバボスは勃起しなかったので、彼は恥じて刃物で性器を切断したのだという。
*同様の状況で、美女のばあいは自分の顔を焼く→〔火傷(やけど)〕2の『夏祭浪花鑑』「釣舟三ぶ内の場」。
『肉蒲団』(李漁) 未央生(びおうせい)は、3年間女色を漁った後に(*→〔ふとん〕5)、心を改め、孤峯和尚の寺へ入って出家し、僧「頑石」となる。しかし、昼間は念仏観経(かんきん)に気がまぎれても、夜になると下半身が黙っていない。ある夜、彼は思い切って、菜切包丁で自ら性器を切り落とす。以後は慾念も絶え、道心は堅く、20年後には立派な正果(さとり)を得て遷化した。
『聊斎志異』巻9-347「単父宰」 50歳過ぎの男が、若い後妻をめとった。男の息子2人が、「これ以上子供が生まれないようにしよう」と考え、父親が酔ったのに乗じて、睾丸を割き、薬でくっつけておく。父親はそのことに気づいたが、黙っていた。やがて傷が治ったので、父親は閨房に入る。傷口が口を開け、出血が止まらず、父親は死んだ。
★3.敵によって去勢される。
『アベラールとエロイーズ 愛の往復書簡』第1書簡「厄災の記」 神学者の「私(アベラール)」は教え子のエロイーズと恋愛関係になり、エロイーズは妊娠して男児を産む。「私」たちは、結婚したことを内密にしておきたいと考え、男児を「私」の妹に預けて、エロイーズを修道院へ入れる。エロイーズの親族たちは怒り、「私」の召使いを買収して、残酷な仕打ちをする。「私」は就寝中に、召使いの手で去勢されたのである。
『史記』「太史公自序」第70 『史記』の編纂に着手して7年目、太史公・司馬遷は、敗軍の将・李陵を弁護したために武帝の怒りをかい、宮刑に処せられた。司馬遷は、「昔、孔子は陳・蔡の間に困苦して『春秋』を作り、屈原は放逐されて『離騒』を著した。人は皆、心に鬱結するところがあるゆえに、往時を述べて未来を思うのだ」と考えて奮起し、『史記』130篇、52万6千5百字を完成させた。
『パルチヴァール』(エッシェンバハ)第13巻 魔法の城の主クリンショルは、かつてジチリエ(=シシリー島)のイーベルト王の妃イーブリスに奉仕し、彼女の愛を得た。ある時クリンショルは、王妃の腕に抱かれて眠っているところを、イーベルト王に見られてしまった。王はクリンショルの性器を切り取り、彼の股間を平らにした〔*女性を楽しませることが不可能になったクリンショルは、その後、魔法を学び、大勢の騎士や貴婦人を捕らえて城に監禁した〕。
『サラジーヌ』(バルザック) 天才的彫刻家サラジーヌは、美貌のプリマドンナ、ラ・ザンビネッラを恋し、結婚したいと願う。しかしラ・ザンビネッラは女ではなく、カストラート(去勢歌手)だった。それを知ったサラジーヌは、剣を抜いてラ・ザンビネッラを斬ろうとするが、逆に、ラ・ザンビネッラのパトロン、チコニャーラ枢機卿が放った刺客によって殺されてしまう。ラ・ザンビネッラは後に巨富を得、痩せた小柄な老人となっても社交界に出入りしていた。
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