原案発表と新たな疑惑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 07:15 UTC 版)
8月28日に組織委員会は佐野の原案を公表した。原案はTが強調されたデザインだった。このエンブレムは選考で圧倒的な評価を得ていたが、ある海外企業のロゴに似ていることが指摘されたために、修正されることになり、2回の修正によってリエージュ劇場のロゴに似たものに変更されたとされた(最終案は2015年の4月ごろ)。 しかし、この原案には2つの疑惑が指摘された。まず、2013年11月に開催されたヤン・チヒョルト展で使われたポスターの盗用ではないかという指摘があがった。佐野のツイッターとみられるアカウントでも「展覧会いくべしいくべし。ヤン・チヒョルトもやばい」というツイートがあり、佐野がこのデザインを事前に知っていた可能性も示唆された。2つめの疑惑として、以前からのデザインに関する説明との矛盾点も指摘された。 佐野は原案公開前にはエンブレムの右下の銀色の部分を亀倉雄策の影響とし「右下の部分は、1964年のDNAを引き継ぐことに。」と説明していたが、発表された原案には右下の部分はそもそも無かった。佐野は会見で右下の部分を「左上の跳ね」を反転させたと説明しており、組織委員会側が「躍動感がなくなった」と指摘して佐野が修正した部分であった事がエンブレム取り下げ後に判明している。 最終版の赤い丸(右上に位置)はハートの鼓動を表現するとされていたが、原案では右下に配置されていたこと。 Tの文字と大きな日の丸をイメージしてデザインしたとされたが、コンペで当選した時点佐野のデザイン(原案)には大きな円に見える部分は無く、「T」の横棒を表現する両端は三角形だったことや、佐野が「一つの核を見つけたいと思い、『T』に注目しました。」と強調していた「T」の部分は、完成版の前の第一次修正案の段階でTとは違う形状になっていた。8月28日の記者会見において、円をイメージしたという修正案では原案とまったく別物でないかという質問に対して審査委員代表の永井は、パーツは変わっておらずパーツが動いただけであり、パーツを動かすことで応募作が精緻化されたと主張した。しかし、公募に参加した古平正義は「別ものですよ。4つの部品のうち、元のままは真ん中の黒いところしかない」と語っている。 また、修正に際して審査委など第三者の助言があったのかという質問に対しては、武藤敏郎組織委・事務総長が「すべて佐野さんが決めた」と回答し、最初の記者会見で原案の存在を伏せた理由については、「訴状の相手がIOCであるため、訴訟の影響を考えIOCの理解と了承が必要だったが、放置しておくのもよくないという判断から公表に至った」と述べた。 9月1日、組織委員会の武藤敏郎事務総長は、新たな疑惑の指摘に対し本人に聴取した所、佐野が「(ヤン・チヒョルトの展覧会に)確かに見に行きました。でも、どういうものだったか、覚えていません。自分は独自に作りました」と述べた事を説明した。また原案と矛盾するコンセプト説明がなされていた件については、修正作業は佐野が中心になって実施したものであり、修正後のエンブレムについても佐野がデザインしたものであり、矛盾しないと説明した。
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