厚生省旧庁舎ビル燃焼実験
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「千日デパート火災」の記事における「厚生省旧庁舎ビル燃焼実験」の解説
1973年(昭和48年)5月9日、東京・霞ヶ関の空きビルとなった「厚生省・旧第一別館(5階建て)」を使って千日デパートビル火災の燃焼状況を調査するための実物火災実験が行われた。実施したのは建設省建築研究所、自治省消防研究所、通産省製品科学研究所で、実験は午前6時40分から開始された。本件火災の完全再現実験ということで東京消防庁から6台の消防車両が出場し警戒にあたった。同館2階フロアの一部分(225平方メートル)に千日デパート火災の3階出火当時と同じ量に相当する合計4トンの可燃物(化繊2トン、木材2トン)を設置し、アルコールを撒いて点火した。実験の時間経過と結果は以下のとおりであった。 点火30秒後 化繊の衣類が燃え上がり、2階フロアの天井に黒煙が立ち込めた。 1分30秒後 赤黒い炎がフロア全体を覆い、窓から黒煙が出始めた。 3分40秒後 破裂音とともに窓ガラスが飛び散り、炎が窓外へ噴き出した。2階の天井全体に炎が走り、フラッシュオーバー現象が確認された。 14分後 黒煙が急激に増え、階段を伝って上階に流れ始めると同時に最上階の5階に充満した。5階には「ハツカネズミ」30匹を置いていたが、煙の流入により激しく暴れて苦しがる様子が計測装置に記録された。 33分後 1階の階段入り口から大型送風機を使い、毎分1,000立方メートルの強制送風を開始したところ、階段部分の煙は薄らいだが、2階出火階はバックドラフト現象を起こして激しい炎に包まれ、室内の温度は摂氏1,200度に達した。上階の煙はより一層濃くなり黒煙で視界が利かなくなった。5階のハツカネズミは3分の1が動かなくなった。 60分後 2階の火勢は衰えず、窓枠が損傷して落下した。5階の一酸化炭素濃度は1立方メートルあたり0.07パーセント、酸素濃度は10パーセントを切り、人間が同階で生存不可能な状態に達した。 87分後に建物裏側(中庭)で輻射熱により隣の建物へ延焼し始めたため消火作業が開始された。火災実験はそこで打ち切りとなった。この実験で各階における煙の流動性、一酸化炭素濃度と強制送風による避難路確保の可能性などについて計測し、今後のビル火災対策上の貴重なデータを得た。特に火災の延焼の速さには専門家から驚きの声が上がった。また煙をビル内から排出する目的で強制送風を行った実験(点火33分後)では、本件火災と全く同じ状況が再現されたことから、外部から大量の空気をビル内に入れることは火勢と煙を増やすことに繋がるので危険性が高いとされた。
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