北方艦隊とは? わかりやすく解説

北方艦隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/07 03:54 UTC 版)

北方艦隊
Северный флот
創設 1933年6月1日
所属政体 ロシア
所属組織  ロシア海軍
兵種/任務 艦隊
所在地  ムルマンスク州セヴェロモルスク
愛称 СФ
戦歴
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北方艦隊(ほっぽうかんたい、ロシア語: Северный флот, СФ, ラテン文字転写: Severnyy flot, SF スィェーヴィェルヌィイ・フロート)は、ムルマンスクに司令部を置くロシア連邦海軍艦隊の一つ。白海バレンツ海など北極海の防衛を担うほか、大西洋へも進出する[1]。艦隊主力が駐留する軍港都市セヴェロモルスク閉鎖都市となっている。

概要

北方艦隊の徽章

北方艦隊は、ロシアでは最も新しい艦隊である。

1933年6月1日、前身となる北方小艦隊(英語: Northern Flotilla)が設置された[2]。最初に配備されたのはノヴィク級駆逐艦ロシア語版ウリツキーロシア語版ルイコフロシア語版などであった[2]。北方艦隊となったのは1937年5月11日のことである[2]

ソ連時代後半には多数の原子力潜水艦を擁したことで知られ、最大で200隻の潜水艦が所属していた。また、航空母艦や大型のミサイル巡洋艦も保有し、ソ連海軍の中でも特に有力な艦隊であった。

しかし、ソビエト連邦の崩壊後には逆にこれらの大型艦が重荷となった。北方艦隊では原子力潜水艦やキーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦の維持を優先したことから、有力なソヴレメンヌイ級駆逐艦はじめ他の艦船の多くが活動不可能な状態に陥った。一部の艦船は整備を受けられないまま退役を余儀なくされ、北方艦隊の勢力は大きくそがれることとなった。

2000年代に入りロシア連邦の経済状況が改善する中でこうした危機的状況も徐々に改善しつつあり、活動を休止していた艦船も一部が戦列に復帰している。

2007年11月27日、ロシア海軍総司令官ウラジーミル・ヴィソツキー大将は、北方艦隊基地へ出張中に「ロシア北方艦隊の行動海域は、大幅に拡大される」と発言した。

この発言は、海外では注目されなかったが、ヴィソツキー発言から8日後の12月5日、第43ロケット艦師団所属の重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」(実質的には航空母艦)、第2対潜艦師団所属の大型対潜艦「アドミラル・レーフチェンコ」「アドミラル・チャバネンコ」、第16支援艦旅団所属の大型海上給油艦セルゲイ・オシポフ」、救助曳航艦「ニコライ・チケル」で構成される戦闘艦艇グループがセヴェロモルスクを抜錨、2ヶ月間の北東大西洋及び地中海への遠征へと出発した。戦闘艦艇グループは北方艦隊司令官ニコライ・マクシモフロシア語版中将が率い、艦隊運用は第43ロケット艦師団司令官アレクサンドル・トゥリーリンロシア語版少将が行った。

2010年には第18潜水艦師団が廃止され[3]弾道ミサイル潜水艦部隊は第31潜水艦師団に集約された。

北方艦隊は2010年9月20日に発足した西部軍管区の傘下とされていたが、2014年12月1日には北極防衛の強化のため北方艦隊が新たに独立した作戦・戦略司令部(OSK)とされ、それまで西部軍管区に所属していた戦力の一部を含め統一指揮することとなった[4]

2021年には北方艦隊自体が独立した軍管区に昇格し、コミ共和国アルハンゲリスク州ムルマンスク州ネネツ自治管区も管轄していた[5]

2024年には2010年当時の西部軍管区の領域は再度レニングラード軍管区モスクワ軍管区に分割されたため、北方艦隊は独立した軍管区ではなくなった[6]。また2024年現在では海軍の各艦隊は軍管区ではなく海軍総司令官の指揮下にある[7]

  北部軍管区の領域

編制

Map of naval bases, shipyards and spent fuel storage sites operated by the Northern Fleet

2021年時点、北方艦隊はロシア連邦海軍で最有力の艦隊であるとされている[5]

攻撃部隊は、原子力あるいはディーゼル動力の潜水艦と航空母艦を主力に、巡洋艦、駆逐艦、大型対潜艦など一通りの水上戦闘艦艇を保有している。北方艦隊所属の重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」は、2021年現在ロシア海軍にとって唯一の航空母艦である。

この他、北方艦隊には対潜哨戒機ヘリコプターを中心とした海軍航空隊も所属し、これらは水上艦艇と協力して敵潜水艦や不審船の脅威から国土を守る任務についている。第61海軍歩兵旅団という陸戦部隊も所属し、複数の大型揚陸艦からなる上陸部隊も構成されているが、規模はあまり大きくなく、輸送力は限られている。

なお、この他に北方艦隊の担当領域ではロシア国境軍の艦艇も活動している。これは海軍艦艇ではなく、北方艦隊とは別組織である。

艦艇部隊

航空部隊

海軍歩兵・沿岸防衛部隊

脚注

注釈

出典

  1. ^ (解説)ロシア軍による地中海・北大西洋方面での大規模演習の実施”. 防衛白書 2008年版. 防衛省. 2021年5月12日閲覧。
  2. ^ a b c Hill 2003, p. 66.
  3. ^ Осинцев 2011.
  4. ^ “急速に北極の防衛強化を進めるロシア あくまでも「既存の兵力の更新」を主張”. WEDGE Infinity. (2014年12月19日). https://wedge.ismedia.jp/articles/-/4562?page=1 2021年5月12日閲覧。 
  5. ^ a b “露北方艦隊、軍管区に昇格 北極圏実効支配へNATO牽制”. SankeiBiz. (2021年1月15日). オリジナルの2021年1月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210114212627/https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210115/mcb2101150613004-n1.htm 2021年5月12日閲覧。 
  6. ^ ロシアが欧州方面の軍管区を二分割、スウェーデン加盟で拡大したNATOに対応か”. 讀賣新聞オンライン (2024年2月27日). 2024年3月29日閲覧。
  7. ^ ロシア連邦 基礎データ”. 外務省. 2024年6月13日閲覧。
  8. ^ a b Tony Roper (2021年6月4日). “Project 885M SSGN Kazan arrives at Zaozyorsk base”. janes.com. 2025年5月5日閲覧。
  9. ^ 深海部隊イズベスチヤ2018年4月10日
  10. ^ Большой десантный корабль "Петр Моргунов" передали ВМФ России (ロシア語). Интерфакс. (2020年12月23日). https://www.interfax.ru/russia/742631 
  11. ^ Богдан Степовой & Андрей Рамм (2023年12月25日). “Ледяной прием: Севморпуть прикрыл смешанный авиакорпус” (ロシア語). Известия. 2023年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月13日閲覧。

参考文献

  • Hill, Alexander (2003). “The birth of the soviet northern fleet 1937–42”. The Journal of Slavic Military Studies 16 (2): 65-82. doi:10.1080/13518040308430560. 
  • В. В. Осинцев. 18-я дивизия подводных лодок Северного флота. Люди, корабли, события. — СПб.: Тайфун, 2011. — Т. 13. — 260 с. — («На службе Отечеству»).

関連項目

外部リンク


北方艦隊

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ソオブラジーテリヌイ (大型対潜艦)」の記事における「北方艦隊」の解説

ソオブラジーテリヌイは、1982年8月6日付け赤旗受賞北方艦隊へ配置換え受けた1985年9月26日から30日にかけては、アイルランドコーク訪問した1988年10月1日には戦列離脱し保管状態に入れられた。資金資産局への引渡し解体売却のため、1992年7月3日には退役となった1992年10月23日には、海軍除籍された。1994年にはインド私企業売却され解体された。

※この「北方艦隊」の解説は、「ソオブラジーテリヌイ (大型対潜艦)」の解説の一部です。
「北方艦隊」を含む「ソオブラジーテリヌイ (大型対潜艦)」の記事については、「ソオブラジーテリヌイ (大型対潜艦)」の概要を参照ください。

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