化石燃料鉱床
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 08:54 UTC 版)
石炭・石油の起源については各々の項目に詳しく記載されているので、ここでは鉱床の形成条件について記述する(石炭や石油は鉱石ではないが非常に重要な地下資源なので、鉱床学の一分野として取り扱われる。)。石炭の鉱床を炭田 石炭の鉱山を炭鉱と呼び、石油の鉱床を油田 石油をくみ上げる施設を油井と称する。 石炭は植物の遺体が分解せずに地中に埋まって長い年月の間に熱や圧力を受けて変質したものである。このため鉱床(炭田)を形成する条件として下記のものがあげられる。 大量の植物が繁茂すること。石炭は植物が進化し地上に大規模な森林が形成されるようになった石炭紀(3億6700万年前から2億8900万年前)以後の地層に存在する。 植物の遺体が完全に腐敗する前に地中に埋まること。現在の湿地帯の様な地表の酸素の乏しい条件が求められる。 大規模な炭田が出来るためには長期間安定して植物が繁茂し続けること。すなわち地殻変動の少ない場所が望ましく、日本のような地殻変動の激しい地域では大規模な鉱床はできにくい。 石炭資源の特徴として他の資源に比べて地域的な偏りが少ない点があげられる。オーストラリアや南アフリカなどの人口の少ない国の大規模炭鉱以外に 人口が多く産業活動の活発なアメリカ、中国、旧ソ連、インド、ドイツ、イギリスなどにも大きな炭田が存在する。昭和30年代まで日本にはたくさんの炭鉱が稼働していたが、複雑な地層に起因する困難な作業条件による高コストが、露天掘りで大量に採掘される安価な輸入炭に対抗できず、釧路コールマイン1か所を残して他はすべて商業的な採掘を終えた。 石油はその起源について諸説あるが、今のところケロジェン(kerogen)を中間体とする「生物由来説」が主流となっている。石油が他の鉱物と際立って異なる点は液体であること。このため地下でも隙間のある地層中では容易に移動できる。石油は周囲の岩石より比重が軽いので移動は主に上方に向かうが上部に液体を通さない緻密な層(帽岩)がある場合はその場所に滞留する。典型的な油田の構造は緻密な地層と隙間の多い地層がゆるやかに上下に波打って互層している場所で、隙間の多い地層(貯留岩)の最上部の凸部分に石油がたまっている構造である。地形としては平野、海岸、大陸棚に多く存在している。油田が海底にある場合右写真のような海上の掘削櫓が使用される。石油の素となった生物は石炭のように地上の植物に限定されないため、陸上植物発生前のオルドビス紀(5億0900万年前から4億4600万年前)の地層からも産出する。しかし主な油田は新生代第三紀(世界の油田の50から60%)と中生代(同30から40%)の地層中に存在する。石油資源は地域的な偏在が激しく、ペルシア湾周辺、旧ソ連およびメキシコ湾周辺に巨大な油田が存在し、この3か所だけで世界の可採埋蔵量の半分以上を占める。石油資源がこの地域に集中して形成された原因は現在明らかではない。
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