動物愛護上の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 05:42 UTC 版)
「バタリーケージ」の記事における「動物愛護上の問題点」の解説
鶏は、巣の中で産卵し、地面をクチバシでつつき、爪で土を掻きエサを探す、止まり木に止まる、砂浴びをする、などの本能的行動欲求を有する。 しかし、1羽当たりのケージ空間は狭隘で、それらの行動を行う資材が設置されていないため欲求を満たせず、ストレスを受ける。 巣 巣の場所の選択、巣の形成といった巣作り行動は、産卵に動機づけられた行動欲求であり、それらができないことに対する不快な発声 (Gakel-call) や心拍数などから、欲求不満が覚知できる。鶏はケージ内で巣箱が無いことに対する適応が困難である。 止まり木 止まり木に止まることもまた、本能的行動欲求である。鶏は日中に高い場所を求めることがあるが、休息や睡眠のために場所を選ぶ夜間は特に高い場所を求めるよう強く動機付けられている。夜中にはほぼ全ての鶏が止まり木で睡眠する。 採餌・探査行動 採餌・探査行動は、ニワトリの通常行動レパートリーの重要な部分である。敷料(床に敷かれた藁や土などの敷材)は鳥の環境の重要な要素であり、鶏が引っ掻いたりつついたりするために広く使用される。バタリーケージに入れられた雌鶏は敷料の対する欲求は高い。鶏は不断給餌されている場合であっても、採餌行動を行う。これはコントラフリーローディング(英語版)と呼ばれる現象で、動物が、与えられた餌か、入手するのに探すという努力を必要とする餌かの両方の選択を提供されたとき、努力を必要とする餌を選択するという、動物生来の行動的動機を示している。 砂浴び 砂浴びへの欲求も高い。砂浴びは鶏の体のメンテナンスに役立つ意欲的な行動である。砂浴びの際、鶏は、砂のような緩い敷材を羽毛に通して働かせる。この行動は古くなった脂質を取り除き、羽毛の状態を維持するのに役立つ。また良好な羽毛状態は体温調節と皮膚の傷害からの保護に役立つ。砂浴びのできる環境であれば、鶏は一日最大23%を砂浴び行動に費やす。砂浴び場のないバタリーケージの中でも鶏は砂浴び様行動(砂浴びの真似事)をとるが、砂浴びの機能は充足されず、砂浴びを完了できない。また、砂浴び場は、砂浴びのためだけでなく探査行動の発現においても重要である。 以上のように、行動学見地の傍証は、バタリーケージにおける動物福祉の問題を提示している。 また、バタリーケージは疾病や怪我を誘因する。採卵鶏は、採卵効率に特化した品種改変で、健康的生育に必要なカルシウムも卵殻形成に排出され、ケージ飼養の鶏の骨粗しょう症率は高い。ケージの各面は糞尿の清掃効率向上のために金網で、脚は角質化、裂傷、病変、爪は過度な伸長、捻れ、破損、足裏は金網による接地圧力の遍在で損傷などが頻発し、羽毛も摩耗する。 2008年1月8日に欧州委員会は、採卵鶏のバタリーケージによる飼養の禁止は鶏の健康や動物福祉を改善する、とする報告書を公表した。 こういったことから、アジアを含め、世界各国で鶏のケージ飼育廃止の市民運動が行われている。
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