分子生物学におけるオートファジー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 23:34 UTC 版)
「オートファジー」の記事における「分子生物学におけるオートファジー」の解説
オートファジー遺伝子は、出芽酵母による遺伝学的スクリーニングによって初めて同定された。それに続いて、オートファジー遺伝子に機能の特徴が発見され、様々な異なる生物におけるオートファジー遺伝子のオルソログが同定され、研究されていった。2022年現在、36種類のAtgタンパク質がオートファジーにとって特に重要であると分類されており、そのうち18種類はオートファゴソームの生成に必須となっている。 哺乳動物では、アミノ酸や成長因子、活性酸素などの量を目安にしてプロテインキナーゼ(以後単にキナーゼと呼ぶ)であるmTORおよびAMPKの活性が調節されている。これらのキナーゼは、Unc-51様キナーゼであるULK1およびULK2(Atg1(英語版)の哺乳類ホモログ)の抑制性リン酸化を介してオートファジーを調節する。オートファジーの誘導は、ULKの脱リン酸化と活性化をもたらす。ULKは、Atg13、Atg101、FIP200(英語版)を含むタンパク質複合体の一部として、Beclin-1(Atg6(英語版)の哺乳類ホモログ)をリン酸化して活性化する。オートファジー誘導性のBeclin-1複合体には、タンパク質PIK3R4 (p150)、Atg14L、そしてクラスIII PI3キナーゼであるVps34が含まれている。活性化されたULKやBeclin-1複合体は隔離膜に再局在し、下流のオートファジー成分の活性化に寄与する。 VPS34は活性化されると脂質ホスファチジルイノシトールをリン酸化し、隔離膜の表面にPtdIns(3)Pを生成する。生成されたPtdIns(3)Pは、PtdIns(3)P結合モチーフを含むタンパク質のドッキングポイントとして使用される。WIPIタンパク質ファミリーに属するPtdIns(3)P結合タンパク質であるWIPI2は、最近Atg16L1に物理的に結合することが示された。Atg16L1は、オートファゴソーム形成に不可欠な2つのユビキチン様結合システムのうちの1つに関与しているE3様タンパク質複合体のメンバーである。FIP200を含むシスゴルジ由来の膜はATG16L1陽性エンドソーム膜と融合して、HyPAS (hybrid pre-autophagosomal structure) と呼ばれるプロファゴフォアを形成する。ATG16L1のWIPI2への結合は、ATG16L1の活性の媒介となる。これにより、ユビキチン様結合システムを介して、プロファゴフォアがATG8陽性ファゴフォアに変換される。 オートファジーに関与する2つのユビキチン様結合システムのうちの1つ目は、ユビキチン様タンパク質のAtg12をAtg5と共有結合させる。この結合タンパク質はその後Atg16L1と結合し、2つ目のユビキチン様結合システムの一部として機能するE3様複合体を形成する。この複合体はAtg3を結合して活性化し、最もよく研究されているLC3タンパク質であるユビキチン様酵母タンパク質Atg8の哺乳類ホモログ(LC3A-C、GATE16、GABARAPL1-3)をオートファゴソーム表面の脂質ホスファチジルエタノールアミン (PE) に共有結合させる。こうして脂質化されたLC3はオートファゴソームの閉鎖に寄与し、特定の積み荷やセクエストソーム-1などのアダプタータンパク質のドッキングを可能にする。オートファゴソームは、SNAREやUVRAGなどの複数のタンパク質の作用によってリソソームと融合する。融合後、LC3は小胞の内側に保持され、分解される。一方、外側に付着したLC3分子はAtg4によって切断され、リサイクルされる。オートリソソームの内容物はその後分解され、それらのビルディングブロックはパーミアーゼの作用によって小胞から放出される。 サーチュイン1 (SIRT1) はオートファジーに必要なタンパク質のアセチル化を防ぐことによってオートファジーを活性化しており、このことは培養細胞や胚、新生児組織で示されている。この機能は、サーチュイン遺伝子の発現と、カロリー制限による栄養制限に対する細胞応答とを関連付けている。
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