写本の系統
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 17:13 UTC 版)
ゲフケンは校訂に当たって12あまりの写本を参照し、それをオメガ (Ω) 写本群、フィー (Φ) 写本群、プシー (Ψ) 写本群の3つの写本群にまとめ、後の写本群になるほど信頼性が落ちると評価した。現在までにゲフケンが利用していなかった写本がさらに2つ発見されているが、ゲフケンの写本群分類は踏襲されている。 写本群ごとに収録巻数には大きな違いがある。オメガ写本群は基本的に第9巻から第14巻までしか含まれていない。逆にフィー写本群とプシー写本群には第1巻から第8巻までしか含まれていない。フィーとプシーにも違いがあり、フィーは序文を含んでいる代わりに第8巻の末尾(487行目から500行目)が欠落している。他方、プシーは序文を含んでいない上に、フィーの第8巻の一部(これは現在の校訂版でも第8巻に置かれている)が最初に持ってこられている。 写本に関する成立時期や関連情報をまとめておくと以下の通りである。 略号写本名成立時期備考Ω M Codex Ambrosianus E64 sup. 15世紀 1817年にマイが発見。11巻から13巻を含まない。 Q Codex Vaticanus 1120 14世紀 1828年にマイが発見。 V Codex Vaticanus 743 H Codex Monacensis gr.312 1541年 Z Codex Hierosolymitanus Sabaiticus 419 14世紀末 ゲフケンは言及していなかった。 Φ A Codex Vindobonensis hist gr. XCV16 15世紀 1555年にカスティリオが利用した。 P Codex Monacensis 351 1545年のベトゥレイウス版の底本となった。 B Codex Bodoleianus Baroccianus 109 15世紀末葉 S Codex Scorialensis II Σ 7 D Codex Vallicellianus gr.46 16世紀 ゲフケンは言及していなかった。 Ψ F Codex Laurentianus plut. XI 17 15世紀 R Codex Parisinus 2851 15世紀末葉 1599年にオプソポエウスが底本とした。 L Codex Parisinus 2850 1475年 T Codex Toletanus Cat 99.44 1500年頃 これらの写本によって『シビュラの託宣』の内容が全て伝わっているとは断定できない。実際、写本群に含まれていない「断片」の存在は、失われた要素があることを示唆している。そして、もう一つ問題なのは、ベトゥレイウスが使用したP写本をはじめとする多くの写本で、第3巻冒頭(96行目まで)に混乱が見られることである。多くの写本では「第2巻から」と記載されており、それらが第2巻の一部であることを示唆している。さらにプシー写本群の一部に至っては、92行目と93行目の間に断絶を設定し、そこに入るべき第2巻の末尾と第3巻冒頭が失われたことを示唆する書き込みまで存在している。 また、「断片」1から3が第3巻冒頭の内容と密接に関係していることなどから、クルフェスのように、第3巻冒頭と断片1から3で、本来は別の一巻を構成していたと推測する者もいる。コリンズも、第3巻の46行目から92行目が特定の巻の結論部分のような側面を持っていることからこの仮説に好意的だが、1行目から45行目と46行目と92行目が最初から一体のものとして存在していたのかには疑問を呈している。
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写本の系統
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