冒涜法 - 刑法第295-C項
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/22 06:52 UTC 版)
「アーシア・ビビ事件」の記事における「冒涜法 - 刑法第295-C項」の解説
パキスタンにおいてイスラム化政策が推し進められたのはムハンマド・ジア=ウル=ハク政権下においてである。1979年にフドゥード法(イスラム法上のハッド刑を明文化したもの)が制定され、最高裁判所と高等裁判所にシャリーア法廷も設置された。 冒涜法はすでに植民地時代から刑法第295条に定められていたが、1982年に、「コーランの法典を意思をもって汚す、傷める、神聖さを汚す者は終身刑に処される」という内容の第295-B項が追加され、1986年に再度改正され、直接的・間接的に「神聖なる予言者ムハンマドの名を汚す」者は死刑もしくは終身刑に処されるという第295-C項が追加された。しかし、人権団体の報告によると、この冒涜法は、個人的怨恨を晴らすため、立場の弱い人々(キリスト教徒、シーア派やアフマディー派のイスラム教徒、ヒンドゥー教徒など)を脅迫するため、財産没収・職業剥奪のため、紛争に起因する報復のためなどに悪用されることが多く、政治関係者や報道関係者が標的にされることも少なくない。たとえば、2015年9月2日にキリスト教徒のペルベズ・マシーが冒涜行為で告発され、カスール県警察に逮捕されたが、後に商売敵のイスラム教徒との商事紛争が原因であったことが明らかになった。このような事実無根の訴えは後を絶たず、毎年100人以上が冒涜罪で告発されている。まだ絞首刑の執行はないが、上訴審を待ちながら収監されている人々も多く、有罪判決を受けた者は刑務所で衰弱している。ムハンマドを冒涜したとの疑いがかけられれば、証拠がなくても私刑により殺される可能性もある。しかも、政府はこうした訴えから国民を保護する措置を講じていなかった。 さらに、下級裁判所については、とりわけ冒涜行為事案では「立証基準の遵守を怠ることが多く」、また、審理は威圧的雰囲気のなかで行われるため、イスラム武装勢力による報復の恐れや保身を理由に被告人の保釈や無罪判決を拒否するのが一般的であるという。
※この「冒涜法 - 刑法第295-C項」の解説は、「アーシア・ビビ事件」の解説の一部です。
「冒涜法 - 刑法第295-C項」を含む「アーシア・ビビ事件」の記事については、「アーシア・ビビ事件」の概要を参照ください。
- 冒涜法 - 刑法第295-C項のページへのリンク