内容の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 10:00 UTC 版)
「ノストラダムスの大予言」の記事における「内容の問題点」の解説
本来「百詩篇集」などと訳されるべき『予言集』の主要部分の名称が、英訳からの転訳によって生じた誤訳である『諸世紀』となっていたり(ここでは『予言集』そのものの換称として用いられている)、架空の研究家の名前や創作と思われる詩や史料が登場していたり、いたずらに「1999年7の月」の詩を誇張したり、ノストラダムスの生涯に関する記述などにもかなりフィクションが含まれているなど、実際にはノストラダムスの予言解釈本というよりも、五島勉の小説という色合いが強いと指摘されている。 だが、と学会関係者が本格的に俎上に乗せるまでの長い間、そうした問題点はほとんど指摘されることがなく、ノストラダムスの予言を扱ったテレビ番組などでも五島の著書に沿う形で紹介されることがあったため、この著書による誤ったノストラダムス像が多くの人々に影響を与える結果となった。 また『大予言』第一作は、当時の「終末ブーム」への便乗という執筆動機は明らかであるものの、地球規模の環境汚染や全面核戦争など、真摯な近未来の危機への警告書という体裁を一応はもっていた。その反面、予言が間違いなく当たるものだということも強調されるという矛盾した姿勢が存在していた。これについては、外れたときの弁明の余地を残したのではないかという指摘もある。後のシリーズでは、中国人民解放軍のヨーロッパ侵略を予想するなど、国際情勢の読みを大きく誤った記述が見られるほか、ユダヤ陰謀論への言及などが見られるようになり、さらには(五島の著書に通底する)白人および欧米文明への嫌悪感などもより強く現れるようになった。 そして、続編でも創作と思われるエピソードが多用される傾向は変わることがなく、特に「ブロワ城の問答」と呼ばれるエピソードは、他の多くの信奉者たちの著作にも影響を及ぼした。これは、ノストラダムスがカトリーヌ・ド・メディシスに対し、「恐怖の大王」の正体は目に見えないものだと語り、「恐怖の大王」の出現の前に「別のもの」が現れれば人類は救われると語ったとするエピソードだが、裏付けとなる史料が確認できておらず、五島の創作と指摘されている。 宮崎哲弥や山本弘は、ベストセラーになったこの本が1980年代以降の新宗教に少なからぬ影響を与えたと指摘している。実際、この時期の新宗教には、自分の教団(もしくは教祖)こそが、上記の世界を救う「別のもの」であると主張するものも見られた。さらにこうした影響がその後のオウム真理教事件の遠因になったとも指摘される。キリスト教やユダヤ教における本来の終末論とはかけ離れた終末思想を生み出した。
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