使用による人体への効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 07:40 UTC 版)
イヌリンは人体においてデンプンを消化するために分泌されるアミラーゼ(プチアリン・アミロプシン)という酵素によって消化されない。通常の消化過程ではイヌリンが単糖類にまで分解されることはないので、その摂取により血糖値が上昇することはない。イヌリン自体のGI値は1程度である。むしろ、難消化性デキストリン等の他の水溶性食物繊維同様、前後に接触したほかの糖質の吸収を穏やかにする効果により食後血糖値の急激な上昇を抑制すると予想される。さらに、一部の腸内細菌によって短鎖脂肪酸へと代謝されることにより、間接的に血糖調整ホルモンの一つGLP-1に作用することでインスリンの分泌を活性化する。そのため、糖尿病に対する有効な食事療法の手段として期待が持たれている。 加えて、短鎖脂肪酸は脂肪酸受容体GPR43を介することで脂肪組織でのインスリン作用については抑制することが報告されている。これらのインスリン分泌に関する選択的な活性化と抑制は体全体のインスリン感受性を上昇させ、エネルギー利用効率を上昇させる。そのためイヌリンをはじめとする水溶性物繊維の摂取により短鎖脂肪酸を供給することは食事性肥満の防止に有効と考えられており、実際に、ヒトを対象とした臨床試験でイヌリンの摂取が血中中性脂肪を有意に低下させた例がいくつか報告されている。 また、2型糖尿病の女性49人を対象にイヌリンを投与したところ、空腹時血糖値、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、マロンジアルデヒドの低下が認められ、スーパーオキシドディスムターゼの活性が高まるなど抗酸化能力の増加が認められた。 イヌリンは非常に効果的なプレバイオティクスでもあり、腸内において人体に有益な細菌を増やすのに貢献する。既に述べたように、イヌリンは消化されることなく胃と十二指腸を通過し、腸内の細菌にとって有益な栄養源となる。特に腸内細菌叢における優勢種の一つであり高いイヌリン資化性を持つビフィズス菌の生育に与える影響は高く、多数の研究においてイヌリンの継続的な摂取が腸内のビフィズス菌数を有意に増加させたことが報告されている。 伝統的な食事には、最高で1日当たり20グラムのイヌリンまたはオリゴ糖を含むものもある。キクイモやチコリー、ニンニク、リーキ、玉ねぎ、ゴボウ、ヤーコンといった食材はもともと多量のイヌリンあるいはオリゴ糖を含むため、何世紀にもわたって健康への刺激剤と考えられてきた。
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