以前の経典との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 16:01 UTC 版)
「秘密集会タントラ」の記事における「以前の経典との関係」の解説
『秘密集会タントラ』(及びその後の後期密教経典群)は、それ以前の経典の内容と大きく色彩を異にするが、そこに通底するテーマである「欲望を否定しないことや、世俗の積極的な活用」が、それ以前の仏教経典に全く見られなかったかと言えば、そういうわけでもない。 代表的なものとしてよく言及されるのが、『般若経』及び『真実摂経』(『金剛頂経初会』)の一部としても知られる『理趣経』である。また、『維摩経』も、在家者の観点から、教条主義的な欲望否定にこだわる戒律絶対主義者を嘲笑し、欲望を否定しないで涅槃を求める方向性を示そうとしている。 このように、「欲望を否定しない」という側面は、大乗仏教の初期から(一部であれ)孕まれており、『秘密集会タントラ』(及びその後の後期密教経典群)は、その発展形と位置付けることもできなくはない。 また、チベット仏教の高名な学僧であるプトゥンは、この『秘密集会タントラ』を、『真実摂経』(『金剛頂経初会』)の「続タントラ」と位置づけたが、確かに、観法における五部族の組織、曼荼羅の中核をなす五仏の構成(ただし、中心は大日如来から阿閦如来へと交代している)、印契(ムドラー)が「大印」(マハームドラー:正しくは「大身印」。ここでは女性パートナーのこと)に置き換えられるなどは、既に空海の師である恵果阿闍梨の監修による現図曼荼羅の『理趣会』に描かれ、真言宗の伝統的な現図曼荼羅の解説にも述べられているように、『真実摂経』と『秘密集会』の両経典は密接に関係し、後のインド後期密教における『金剛頂経』群においては『秘密集会タントラ』が『真実摂経』(『金剛頂経初会』)の継承・発展的な位置にあることは間違いない。 なお、8世紀中頃の不空訳『金剛頂経瑜伽十八会指帰』には、18種の瑜伽法や経典が挙げられており、その第十五会には「秘密集会瑜伽」に関する極めて簡単な記述があるが、これは『秘密集会タントラ』で言えば、第五分の一部に相当する。無論、この時点ではまだ『秘密集会タントラ』は未完成の段階だったと考えられるが、このようなところからも、両経典のつながりを見出すことができる。
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