他の擬態様式との比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 23:30 UTC 版)
「ベイツ型擬態」の記事における「他の擬態様式との比較」の解説
「ミューラー型擬態#ベイツ型擬態との関係」も参照 有名なベイツ型擬態の例であるシロオビアゲハ(上)。有毒のベニモンアゲハ(下)に擬態している。 ベイツ型擬態は、捕食者などからの攻撃を避けることを目的とする、防御的擬態の一種である。また、ベイツ型擬態は「分離した disjunct」系である。すなわち、捕食者、擬態者、モデルの3者の全てが別種である。 防御的擬態であるベイツ型擬態は、ペッカム型擬態とも呼ばれる攻撃擬態(英語版)とは対照的である。すなわち、攻撃擬態は防御的擬態とは逆に、擬態者が獲物の獲得といった積極的な利益を求める擬態だからである。例えばPhoturis 属のホタルは、別のホタルのメスの出す光を真似ることでそのホタルのオスを誘引し、捕食してしまう。これは攻撃擬態の典型例である。その他に、捕食者が全く関与しない擬態様式もある。分散のための擬態がその一例で、例えばある種の菌類は胞子を散布してもらうため、腐肉の匂いを出して昆虫を誘引する。これはだます対象の生物との接触を高めるための擬態と言え、そのような接触をできるだけ減らすための擬態である防御的擬態とは対照的なものである。 ベイツ型擬態と比較的似た擬態の様式のひとつが、ヴァヴィロフ型擬態(英語版)である。ヴァヴィロフ型擬態はニコライ・ヴァヴィロフによって提唱された擬態の一様式で、雑草が穀物に似た特徴を示す現象のことである。雑草が穀物と似た形の種子をもっていると、唐箕にかける際などに雑草が穀物として誤って選別されてしまう。これをそのまま畑にヒトが蒔くことで、穀物に「擬態」した雑草(随伴雑草あるいは擬態雑草と呼ばれる)が畑ではびこることになる。例えばライムギは最初コムギ畑の雑草として繁殖していたが、コムギに似た個体が除草を免れて更に繁殖していった結果コムギに類似した形態を獲得してゆき最終的に穀物として利用されるに至ったが、これはある種のヴァヴィロフ擬態の例だと言える。このようなヴァヴィロフ型擬態では、擬態によってだます対象はヒトである。ヒトは雑草にとって捕食者ではないため、ヴァヴィロフ型擬態はベイツ型擬態には該当しない。一方で、ベイツ型擬態と呼べる特徴を示す植物も知られている。アケビ科のBoquila 属に属するつる植物の葉は無毒だが、自身が巻きついている樹木の葉に葉の形を似せることで、植食者からの捕食の可能性を減らしている。 ベイツ型擬態と似たような擬態に、ブラウワー型擬態(Browerian mimicry)がある。これはこの擬態について研究したLincoln P. BrowerとJane Van Zandt Browerの名前をとったものである。この擬態様式は自己擬態(英語版)の様式のひとつであり、モデルと擬態者がどちらも同じ種である場合のベイツ擬態の一形だと言える。すなわちブラウワー型擬態は、同種のより不味な個体に擬態することを指す。この擬態様式は、捕食者にとって有害な種の中でも、その有害度合いに個体差がある場合に成立する。例えばオオカバマダラ(Danaus plexippus )の幼虫は有毒なトウワタの仲間(ミルクウィード)を食べるため、捕食者にとって有毒である。しかしその毒性には個体差があり、有毒の植物を多く食べた個体は毒性が強いが、それほど食べていない個体の毒性は比較的弱い。しかしこの場合、毒性の弱い個体も毒性の強い個体と外見は同じため、捕食される可能性は低い。 もうひとつの重要な擬態様式のひとつとして、博物学者フリッツ・ミューラーにちなんで命名されたミューラー型擬態がある。ミューラー型擬態は、モデルと擬態者の両方が警告色を示す、互恵的な擬態である。モデルも擬態者も有毒であるため、必ずしも捕食者を騙すための擬態というわけではなく、またハチの仲間のように、非常に多くの種からなる擬態関係もあり得る。
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