人や動物の図像表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 09:51 UTC 版)
詳細は「イスラーム美術における図像表現(フランス語版)」を参照 イスラーム美術には全く偶像が存在しないと考えられがちであるが、陶芸や写本芸術などでは数多くの人や動物の姿が表されている。クルアーンは偶像を禁じているが、これは神の姿を像に表し崇めることを禁じたもので、人間や動物を描くことを禁じたものではない。他方、ハディース(ムハンマドの言行録)の中には、動物の姿を描くことを神への挑戦であるとして非難するものがある。よって、あらゆる領域において神の表現は行われないが、人間や動物を描くことはモスクなどの宗教的文脈でこそ忌避されても、世俗の領域では必ずしもそうではなかった。ローマ帝国の壁画の習慣はイスラームではハンマーム(公衆浴場)の中に残り、動物や人間が描かれた。人物画についてはシャリーアの見地からは反対もされたが、浴場の絵画は身体の動物的・自然的・精神的能力を高めるとして支持された 「 おお信ずる者たちよ! 酒、賭博、石(偶像)、矢(矢占い)は忌むべきサタンの業である。これらを避けよ、さすれば汝らは栄えるであろう。 」 —『クルアーン』5章90節(食卓の章) またムハンマドだけでなくイエスやその他の旧約聖書に登場する預言者たちや、さらにはイマームたちの宗教的な図像も描かれることがあり、時代や地域によって顔に覆いがかけられることもあった。ムハンマドは神ではなく預言者であり、よってクルアーンの偶像禁止とは関係せず、また当初は神格化もされなかった。時代が下ると共に光背や頭光が描かれるようになり、16世紀には顔にベールがかけられ、18世紀には姿全体を隠すことも行われるようになった。このように図像表現の問題は複雑なものであり、時代や地域による変遷もあるのでさらに理解は困難なものとなっている。人物の挿絵が載っている宗教書の写本は少なく、預言者に関するダリールの『預言者の生涯』(1388年)、ムハンマドの夜の旅の挿絵があるミール・ハイダルの『昇天の書』(1436年)、第4代正統カリフのアリーの生涯を記したイブン・フサーム『使徒の書』(1480年)などが知られている。
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