京都府総合教育センターによる調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 04:11 UTC 版)
「学生服」の記事における「京都府総合教育センターによる調査」の解説
また、京都府総合教育センターが1982年及び1983年に発表した「子どもの生活意識と行動に関する研究調査―第1年次まとめ(中学校)―」(1981年10〜12月調査)及び「子どもの生活意識と行動に関する研究調査―第1年次まとめ(高等学校)―」(1982年9〜12月調査)においては、中学2年生及び高校2年生の、変形学生服など「各種問題行動」への意識、経験が調査されている。この調査では、調査項目では「制服の変形」への意識、経験が質問されているが、「変形学生服」の着用と同じ意味と捉えて差し支えないと考えられる。 まず「制服の変形」をやってみたいと思うか、という質問に対して、「自分もぜひやってみたい」(中学2年生で13.8%、高校2年生で17.9%)及び「やってみたいと思う時がある」(中学2年生で39.8%、高校2年生で42.1%)と回答しており、合わせて中学2年生で53.6%、高校2年生で60.0%の生徒が「制服の変形」をやってみたいと回答している。このように半数を超える生徒が「制服の変形」欲求をもっていたことから、「制服の変形」が中高生において、身近に憧れるものであったことが明らかとなり、高校ではより強く多くのものが衝動されることを示している(「やろうとは思わない」は中学2年生で46.5%、高校2年生で40.0%)。 なお「パーマ・染髪」をやってみたいと思うか、という質問に対して、「自分もぜひやってみたい」(中学2年生で6.9%、高校2年生で18.0%)及び「やってみたいと思う時がある」(中学2年生で26.2%、高校2年生で46.5%)と回答しており、合わせて中学2年生で33.1%、高校2年生で64.5%の生徒が「パーマ・染髪」をやってみたいと回答している。この結果は、生徒にとって「制服の変形」と同様に、「パーマ・染髪」も身近であったことを示しているが、中学2年生では「制服の変形」が「パーマ・染髪」を上回っている一方で、高校生では「パーマ・染髪」が「制服の変形」を逆転して多くなっていることは興味深い。 また、問題行動傾向の有無 によっても、「制服の変形」への意識の強さの差異がみられる。「自分もぜひやってみたい」(問題行動傾向有りで中学2年生59.0%・高校2年生60.0%、問題行動傾向無しで中学2年生7.5%、高校2年生で11.8%)で顕著で、問題行動傾向がある者にとって、とりわけ「制服の変形」欲求が強い傾向がある。ただし、「やってみたいと思う時もある」(問題行動有りで中学2年生31.9%・高校2年生で24.8%、問題行動無しで中学2年生40.9%、高校2年生で44.6%)では、問題行動の無いものもかなりの割合で「制服の変形」欲求を持っていることを表している。このことから、問題行動傾向のある者、言いかえれば不良文化と「制服の変形」は親和性があるものの、問題行動のないものでも一定の割合で「制服の変形」欲求をもっていたことが分かる。 次に、「制服の変形」の実行経験 については、中学2年生で「よくやった」が8.9%、「ときどき」が10.8%、「1〜2回」が8.4%であり、合計28.1%もの生徒が実際に経験している(「やってない」は71.9%)。高校2年生では、「よくやった」が17.3%、「ときどき」が15.3%、「1〜2回」が11.2%であり、合計43.7%もの生徒が実際に経験している(「やってない」は56.3%)。中学2年生で四分の一強、高校2年生で半数弱の生徒が「制服の変形」を経験していることは、「制服の変形」が実際にもかなり行われていたことを表している。意識と同様に、高校でより多くのものに「制服の変形」は行われており、意識との乖離が少なくなっていることから、中学では何らかの要因でやりたくても行えなかったものでも、あるいは後述するように強くやりたいと思わないものでも、高校では「制服の変形」が浸透していることが窺える。 意識との関連も強く「自分もぜひやってみたい」と回答したもののうち、中学2年生で75.6%、高校2年生で82.4%が実際に実行している(「よくやった」が中学2年生で42.1%・高校2年生で55.7%、「ときどき」が中学2年生で21.6%・高校2年生で19.3%、「1〜2回」が中学2年生で11.9%・高校2年生で7.4%。「やってない」は中学2年生で24.4%・高校2年生で17.6%)。一方で「やってみたいと思う時もある」と回答したもので実行したものは、中学2年生で37.3%、高校2年生で54.2%となっている(「よくやった」が中学2年生で6.4%・高校2年生で12.6%、「ときどき」が中学2年生で17.8%・高校2年生で23.6%、「1〜2回」が中学2年生で13.1%・高校2年生で18.0%。「やってない」は中学2年生で62.7%・高校2年生で45.8%)。また、「やろうと思わない」と回答したものでも、少数ながら中学2年生で6.1%、高校2年生で15.4%が実際に実行している(「よくやった」が中学2年生で1.2%・高校2年生で5.0%、「ときどき」が中学2年生で1.5%・高校2年生で4.7%、「1〜2回」が中学2年生で3.4%・高校2年生で5.7%。「やってない」は中学2年生で93.9%・高校2年生で84.6%)。 この結果からは、「制服の変形」を中学2年生では「自分もぜひやってみたい」と強い意識を持っているものが中心の文化であったが、高校2年生では、「やってみたいと思う時もある」でも実行したものが半数を超え、「やろうと思わない」という意識をもつものまで一部やるようになるという傾向が見て取れ、中学から高校にかけてより広範な範囲に「制服の変形」文化が根付くようになることが示唆される。 なお、「染髪・パーマ」の実行経験については、中学2年生で「よくやった」が1.8%、「ときどき」が1.5%、「1〜2回」が4.5%であり、合計7.7%の生徒が実際に経験しているに過ぎない(「やってない」は92.3%)。高校2年生では、「よくやった」が5.3%、「ときどき」が6.9%、「1〜2回」が17.0%であり、合計29.2%の生徒が実際に経験している(「やってない」は70.8%)。 意識では前述のように、高校2年生において、「染髪・パーマ」が「制服の変形」を抜いていたが、行動では「制服の変形」が「染髪・パーマ」を上回っている。この結果から、「染髪・パーマ」は高校2年生において、意識が増大するものの実際には行動に移さない(移せない)一方で、「制服の変形」は中学生から意識があり、実際にも比較的実行に移しやすい状況にあったことが分かる。ここからは、「染髪・パーマ」に比べ「制服の変形」に対して社会的寛容性があったと推測される。 また、「制服の変形」の経験のないものに対し、しない理由を質問したところ、「しても意味がないから」が中高とも最も多く(中学2年生で40.2%、高校2年生で62.1%)、ついで中高とも「学校のきまりだから」(中学2年生で17.0%、高校2年生で9.6%)、中学2年生では次に「制服をきるのが当然だから」(中学2年生で14.3%、高校2年生で6.3%)、高校2年生では「かっこうが悪いから」(中学2年生で5.1%、高校2年生で8.7%)が挙げられている。中学生から高校生にかけて「しても意味がないから」が増加し、「学校のきまりだから」「制服をきるのが当然だから」が減少している結果に対して、国立教育研究所内校内暴力問題研究会は「社会的しきたりのレベルに属する」理由づけから、「自立的な理由づけ」に移行したものであり、「道徳的判断における他律から自立への一応の発達を示すもの」であると分析している。 その他の理由では、「親に注意されるから」(中学2年生で9.1%、高校2年生で4.3%)、「先生に注意されるから」(中学2年生で6.9%、高校2年生で3.6%)においても中学から高校に減少しており、これは、親や教師の変形の制服を抑止する効果が薄くなっているか、そもそも変形学生服の着用に対して注意をしなくなる可能性があることを示している。一方で「しても意味がないから」が大多数を占め、これが高校生で増大することからは、外部の締め付けより自らの意思が変形学生服の着用に影響を与えており、この傾向は高校生でさらに大きくなる傾向にあることを窺わせる。
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