中国語起源説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 04:30 UTC 版)
飯野睦毅は中国語の上古音の語末尾に母音を付加することで、日本語語彙が成り立つとした。例えば「考える(かんがふ)」は「勘合 [kəm ɦəp]」、「拐(かどわ)かす」は「拐 (guad)・惑 (ɦuək)」、「怪(あや)しむ」は「妖 (iɛu)・審 (ʃim)」が訛ったものであるとした。この際、漢語が日本語の動詞になる時、語尾が「p」の語は「ハ行」活用、「m」の語は「マ行」活用になったとし、日本語の動詞の活用に各行の別があるのはここに由来するとしている。しかし、これは単純に少数の単語が偶然の一致するという意見が多く、文法的に違う点が多い中国語起源説は多くの学者から認められていない。 日本語のなかの中国語からの借用語漢字平安時代の訓読み/ローマ字上古音現代音(ピンイン)広東語平安時代の吳音/ローマ字平安時代の漢音/ローマ字備考銭 ぜに/zeni tsian qian2 chin4 セン/sen、ゼン/zen セン/sen ①「ぜ/ゼ→セ」は中古漢語の音系が濁音清化の証拠。②中国語の韻尾/-n/含む漢字、上代日本語読みは語尾のナ行の子音を添える。 睦 むつ/mutu、む/mu miu mu4 muk6 モク/moku ボク/boku 峽 かひ/kafi ɣeap xia2 haap6 ゲフ/gefu カフ/kafu ①ハ行の子音は、上代には[p*]と発音。②中国語の韻尾/-p/含む漢字、日本語読みは語尾のハ行の子音を添える。 注 つ-ぐ/tu-gu tɕio zhu4 jyu3 ス/su シュ/shyu ①「つ→ス/シュ」は古漢語の端母が知母へ移行したの証拠。 牧 まき/maki miək mu4 muk6 モク/moku ボク/boku 殿 との/tono、どむ/domu tyən dian4 din6 デン/den テン/ten ①中国語の韻尾/-n/含む漢字、上代日本語読みは語尾のナ行の子音を添える。 国(語源: 郡) くに/kuni(こほり/kofori) (giuən) (jun4) (gwan6) (グン/gun) (クン/kun) 止 と/to、とむ/tomu、 tɕiə zhi3 ji2 シ/shi シ/shi 馬 むま/muma、んま/nma xan ma3 ma5 メ/me バ/ba、マ/ma 梅 むめ/mume、んめ/nme mə mei2 mui4 マイ/mai、メ/me バイ/bai 麦 むぎ/mugi meək mai4 mak6 ミャク/myaku バク/baku 我 あ/a、あが/aga、われ/ware、わが/waga ŋai wo3 ngo2 ガ/ga ガ/ga ①中国語の疑母/ŋ/含む漢字、音読みはガ行の子音で表す。②中国語の疑母[ng-]は朝鮮漢字音や現代中国語の漢字音では規則的に脱落する。 吾 同上 ŋea wu2 ng4 グ/gu ゴ/go 同上①②。
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