中国の説話や伝承
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中国では、修行を積んだり太陽や月などの力(日精・月華)を得た狐が、変化や仙術を獲得すると考えられていた。 中国古代の地理書『山海経』(せんがいきょう)では九尾の狐は人を食うと記しているが、やがて後漢(25-220年) 班固『白虎通義』などをはじめとする文献では、太平の世に現れる瑞獣であると認識されるようになった。西晋(265-316年)代の編纂とされる『玄中記』では、狐は五十歳から百歳と歳を経るごとに妖力を増し、千歳になると天と通じて天狐になるともされている。 秦(前778-前206年)の時代の呂不韋 『呂氏春秋』(前239年完成)には、古代の王として知られる夏の禹王(うおう)が塗山(とざん)氏の女を見初め、女も禹に魅かれて相愛の関係になったとあり。後漢時代の趙曄(中国語版)『呉越春秋』では、禹王の妻・女嬌は白い九尾の狐であるとされている。これらの記述は、女嬌の一族である塗山氏が狐を崇拝していたことに由来しているのではないかとも考えられている。殷と周の戦いを舞台とした物語として後代に書かれた『武王伐紂平話』(元代)『春秋列国志伝』・『封神演義』(明代)に登場する妲己(だっき)に化けた千年狐狸精は、古代において瑞獣と考えられていた九尾の狐であるが、ここでは瑞祥の要素は描かれず紂王を惑わし王朝を滅亡させる嗜虐を好む悪の存在へ変容している。 東晋(317年 - 420年)の時代に書かれた干宝による志怪小説 『捜神記』には狐が化けたという話がいくつも収録されており、当時の説話での狐の語られ方の様子をうかがうことが出来る。千年をへた変化する狐たちは犬などにもひるまないが千年をへた古木で照らされるのには弱いという話、阿紫と名乗る美女に化けた狐にまどわされた兵士の話など(いずれも巻18に収録)がある。清(1644-1912年)の時代に蒲松齢 によって書かれた志怪の流れをくむ小説集『聊斎志異』には全445話中、狐にまつわる話が63話ほど収録されている。 中国東北部(旧・満州)などでは、日精や月華を得た五種の動物の化身を「五大仙」、「五大家」などと称して狐仙(キツネ)、黄仙(イタチ)、白仙(ハリネズミ)、柳仙(ヘビ)、灰仙(ネズミ)の五種が信奉されていた。いっぽうで五大仙は人間に憑依するともされている。五大仙は財産をもたらすとして「五顕財神」とも呼ばれた。「狐仙」は飢饉から守ってくれると言い、農家は狐仙堂(こせんどう)と称される祠をつくり、狐仙をまつっていた。ここでの「仙」とは「神」という意味に近いものである。「狐仙下馬」(狐憑き。きつねつき)と称して、人に乗り移ると吉凶を占ったり、妖怪を倒す能力を発現するとされる。
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