三相交流電動機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 14:44 UTC 版)
単相交流と三相交流 単相交流 - 1系統の電線を流れる交流。家庭用電源や鉄道の交流電化に用いられる。 三相交流 - 波形の位相を120度ずらした3系統で構成される交流。 単相交流 三相交流 前項では直流電源による電動機について述べたが、さらに交流電源を使用する電動機について解説を加える。 整流子電動機も交流電源で使用が可能であるが、交流電源には誘導電動機や同期電動機が一般に広く使われる。整流子電動機が整流子とブラシにより極性を変えて回転するのに対し、これらの電動機は電圧の向きが周期的に変化する交流電源に同期して回転するものである。 これらの電動機は回転速度が電源周波数に依存するため、細かな速度制御が難しく、鉄道車両のような使用速度域の広い電動機には不向きとされてきた。しかし、20世紀後半のパワーエレクトロニクスの発展によって、電圧や周波数を自在に制御できるインバータが開発されると、一気に電気車の電動機として採用が進んだ。 とりわけ電気車に採用が多いのは、かご形三相誘導電動機である。この電動機は三相交流を流す固定子と、かご形構造の回転子により構成される。固定子に電流を流すと、三相交流の波形に応じた回転磁界が発生し、かご形の回転子に誘導電流が流れて回転する仕組みである。整流子電動機とは異なり、回転子の誘導電流は回転磁界によって自然に生じるものであり、回転子へ電流を流すための整流子・ブラシを必要としないことから、小型・軽量化が図れるとともに高回転・高出力化も容易で保守性にも優れる。 かご形三相電動機のトルク( T {\displaystyle T} )は、電源電圧( V {\displaystyle V} )、電源周波数( f i {\displaystyle f_{i}} )、回転磁界の回転速度( n s {\displaystyle n_{s}} )、回転子の回転速度( n r {\displaystyle n_{r}} )と、 f s = s ⋅ f i = ( n s − n r ) / n s ⋅ f i {\displaystyle f_{s}=s\cdot f_{i}=(n_{s}-n_{r})/n_{s}\cdot f_{i}} T = k ( V / f i ) 2 ⋅ f s {\displaystyle T=k(V/f_{i})^{2}\cdot f_{s}} の関係にある。ここに、 s {\displaystyle s} はすべり、 f s {\displaystyle f_{s}} はすべり周波数と呼ばれるもので、すべりは磁界と回転子の回転速度の差であり、回転子に自励電流を生じさせ誘導電動機にトルクを与えるものである。上式から、誘導電気の特性は、 トルクは電圧の2乗に比例し、電源周波数の2乗に反比例する。 トルクはすべり周波数に比例する。 電圧と周波数を比例させれば≡電圧/周波数を一定に加速すれば定トルクが得られる。 となり、ここで電源電圧およびすべり周波数を一定とすれば、直巻電動機と同様に『トルクが回転数の2乗に反比例』の特性が得られる。 最近では、誘導電動機に代わって埋込構造永久磁石同期電動機 (IPMSM) の採用も増えている。回転子に永久磁石を埋め込んだ空げきのある常磁性体を用いた電動機で、誘導電動機に比べ何らかの損失が少なく、高い効率が得られることが特長である。また、稼働時の放熱が小さいことから密閉構造とすることができ、騒音軽減や電動機内部への粉塵浸入の抑制も容易である。このような特長から、電気自動車やハイブリッドカーではIPMSMの採用が目立っている。一方で、永久磁石の鎖交磁束によって固定子における鉄損や誘起電圧が発生するため、必要に応じて無負荷(惰行運転)時にも弱め磁束制御を手動で行うほか、インバータの故障時に短絡電流を遮断する機器が必要である。また同期電動機としての特性上、複数のモーターを一括制御することは不可能であり、個別制御が必須となり構造が複雑になる。
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