ロシア音楽における業績
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「カッテリーノ・カヴォス」の記事における「ロシア音楽における業績」の解説
カヴォスはロシア・オペラの力強い唱道者であり、彼の円熟期のオペラは、すべてロシア語の台本によって作曲されている。 イギリスのロシア史研究者オーランド・ファイジーズ(en:Orlando Figes)によれば、1803年にロシア皇帝アレクサンドル1世が公設の劇場を支配し、ボリショイ・カーメンヌイ劇場にカヴォスを配置するまで、ロシアのオペラ劇場ではイタリア・オペラしか上演されていなかった。カヴォスはボリショイ・カーメンヌイ劇場をロシア・オペラの拠点とし、『勇士イリヤー』(1807年)をはじめとするロシアの国民的英雄をテーマにしたオペラ作品を書いた。 カヴォスはロシア並びにウクライナの民俗音楽から強い影響を受けており、後にロシア・オペラに強く特徴づけられることになる愛国的・伝説的な要素を取り入れた最初の作曲家となった。ロシア国民楽派の基盤となるロシア音楽の「国民性」は、イタリア人であるカヴォスによってもたらされたといえる。 ロシアの愛国的なテーマを扱ったカヴォスのオペラに『イヴァン・スサーニン』(1815年)があり、ここで描かれるのは、ロマノフ朝の最初の皇帝をポーランド人から救った英雄の物語である。これは、20年後にミハイル・グリンカがオペラ『皇帝に捧げた命』(1836年)で復活させたのと同じテーマだった。 また、ステパン・ダヴィドフとの共作による『レスタ、ドニエプルのルサールカ』四部作は「お伽噺オペラ」のジャンルを形成してヴェルストフスキーやグリンカへと橋渡しする役割を果たした。 イギリスの音楽批評家ジョン・ワラック(en:John Warrack)はカヴォスの業績について、次のように述べている。 カヴォスのオペラはロシア的主題を描いている。寓話作家のイヴァン・クルィロフが台本を担当した『勇士イリヤー』は、エカチェリーナ2世が台本を執筆した『フェヴェーイ』に連なるロマンティックな魔法オペラであるとともに、グリンカの『ルスランとリュドミラ』を予想させる。『火の鳥』(1822年)で扱ったオリエンタリズムの要素は、後にロシアの領土拡大とともに流行し、『ルスランとリュドミラ』さらにはボロディンのオペラ『イーゴリ公』につながっていった。 カヴォスのオペラの主たる台本作者は、帝室劇場の監督アレクサンドル・シャホフスキーであり、シャホフスキーによるオペラ・ヴォードヴィル『コサック詩人』(1812年)のテクストは、当時の愛国的な感情をかき立て、さらに『イヴァン・スサーニン』(1815年)は、フランスで流行した「救出オペラ」に多くを依っている。 グリンカがイヴァン・スサーニンを主題とするオペラ『皇帝に捧げた命』を作曲したのは1836年であり、このとき初演の指揮を務めたのはカヴォスだった。カヴォスは『皇帝に捧げた命』によって自作のオペラが取って代わられるだろうと潔く認めたものの、彼の『イヴァン・スサーニン』は1854年まで帝室劇場のレパートリーに残っていた。 — ジョン・ワラック
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