ルイスの非ニュートン力学
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「ルイス=トルマンの非ニュートン力学」の記事における「ルイスの非ニュートン力学」の解説
アインシュタインは上記の電磁場の相対性に関する理論の発表後、同年それを発展させ、"Ist die Trägheit eines Körpers von seinem Energieinhalt"(「物体の慣性はそのエネルギーに依存するか?」)において、エネルギーの差と質量の差の間に成り立つ関係式 Δ m = Δ E c 2 {\displaystyle \Delta m={\frac {\Delta E}{c^{2}}}} を近似式として導き出していた。 1908年、化学反応における質量保存の法則の成立に関するスイスの化学者H. H. Landoltの研究に導かれる形で、アインシュタインと同じくエネルギーと質量の関係に関心を持っていたアメリカの物理化学者のギルバート・ニュートン・ルイスは、論文"A Revision of the Fundamental Laws of Matter and Energy"(「物質とエネルギーに関する基本法則の一修正」)で、以下の輻射圧に関する運動量保存則に関する考察を進め、上記のアインシュタインの導出とは全く独立に異なる仮定のもとで同じ関係を導出し、さらに質量は物体に固有であるという公理を外した非ニュートン力学の体系(ルイスの非ニュートン力学)を提案した。 ルイスは、物体が光線を受ける光の進行方向に圧力または力を受けるという事実(輻射圧)をもとに、輻射線はエネルギーと運動量を運ぶというジョン・ヘンリー・ポインティングの意見に賛同し、光線が運ぶ運動量に関して運動量保存則が成り立つとすれば、物体が光線から運動量を受け取るのとは逆に等しい運動量が光線から失われているはずだと考えた。これを説明するため、一般に受け入れられていた光の理論である光の波動説をいったん忘れて、光線中では質量をもつ”何か”光速度で移動しているために光線はエネルギーと運動量を持つとし、さらに、物体がその質量を持つ光線を吸収してエネルギーと運動量を得るときは、この質量もまた得る、すなわち光線のエネルギーを吸収する物体の質量は増加すると仮定した。つまり、この場合、質量は定数ではなく変量であると考えた。 この二つの仮定のもと、ルイスは、アインシュタインとは異なり近似式としてではなく精密な式として m = E c 2 {\displaystyle m={\frac {E}{c^{2}}}} を導き出した。この関係を認めれば、質量がエネルギーの量に比例する、つまり、運動すると物体は運動エネルギーを得るのであるからその物体の質量は速度とともに変化するはずである。そこで、ルイスはニュートン力学における物体の質量が速度に依存しないという公理に替えて、物体が運動エネルギーを得るにつれて質量が増加するということを公理と置いて、運動物体の質量 m {\displaystyle m} とその静止しているときの質量 m 0 {\displaystyle m_{0}} の比が、物体の速度 v {\displaystyle v} の光速度 c {\displaystyle c} に対する比を β = v / c {\displaystyle \beta =v/c} とするとき、 m m 0 = 1 1 − β 2 {\displaystyle {\frac {m}{m_{0}}}={\frac {1}{\sqrt {1-\beta ^{2}}}}} になることを導いた。この式によれば、有限の質量をもつ任意の物体は速度が増せば質量(相対論的質量)が増し、光速度を与えることができれば相対論的質量は無限大になる。したがって、光線中で有限の質量と運動量そしてエネルギーをもち光速度で移動する”何か”は、もしそれが静止しているか、もしくは光速度よりもわずかに小さい速度で運動していればエネルギー、運動量あるいは質量をもたないと結論付けた。 後年1926年になって、ルイスは、このアイザック・ニュートン以来の光の粒子説を復帰させるものである光線中を光速度で移動する運動量とエネルギーを運び質量をもつ”何か”を光子(photon)と名付けた。
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