モーヴとは? わかりやすく解説

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モーブ【mauve】

読み方:もーぶ

赤紫色塩基性染料1856年英国パーキンアニリン酸化して作り初めての合成染料として知られるモーベイン

モーブの画像
#915da3/R:145 G:93 B:163/C:50 M:70 Y:0 K:0

モーヴ

名前 Maeve

モーブ

(モーヴ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 01:34 UTC 版)

モーブ (Mauve) は1856年ウィリアム・パーキンが発見し、工業的に生産された世界初の合成染料である[1]モーベイン (Mauveine)、アニリンパープルと呼ばれることもある。紫色の色素であり、アニリン染料に属する。モーブはフランス語のゼニアオイを意味する語から名づけられた[1]

前史

モーブ以前の合成染料としては、フリードリープ・フェルディナント・ルンゲコールタールを蒸留して得たキアノールや、パーキンの指導者でもあったアウグスト・ヴィルヘルム・フォン・ホフマンが合成したアニリン由来の染料があったほか、企業によって試験的に得られていたものもあったが、いずれも実用化には至っていない。

従って、たびたびモーブはセレンディピティ的な発見の経緯と共に「世界初の合成染料」として紹介されるが、正しくは「工業的に生産された世界初の合成染料」ということになる[2]

歴史

パーキンの息子からの手紙。モーブで染められた絹が同封されている

パーキンは当時イギリスの王立化学大学に招聘されていたホフマンに師事していた[1]。パーキンはイースターの休暇で自宅に戻っていた際に、自宅の実験室でキニーネの合成法を研究していた。当時は分子の構造についての概念が未熟であったため、パーキンは当時知られていたキニーネの分子式 (C20H24N2O2) を元に、アリルトルイジン (C10H14N)酸化してやれば合成が可能ではないかと考えた。そこでクロム酸で酸化してみたが褐色のタール状混合物が得られただけであった。

そこで今度はアニリンを同様の方法で処理してみた。同じように黒色のヤニが得られたが、これをエタノールに溶かしてみたところ紫色の溶液が得られた。当時のヨーロッパでは紫色の染料は極めて高価な貝紫しか知られていなかったので、パーキンはこの溶液を染料として用いることを考えた。そしてこの溶液がを染める能力を持つこと、綿についても前処理することで染色が可能なことを発見した。染料として使える程度の耐候性もあることが分かった。

そしてパーキンはこの染料についての特許を取得し、ホフマンの反対を押し切って1857年にこの染料を製造する工場を設立した。1862年にはロンドン万国博覧会においてヴィクトリア女王がモーブで染色した絹のガウンをまとって出席したことでヨーロッパ中の話題になった[1]。しかし、モーブはイギリスでは保守的な染料業者が多かったためあまり評価が高くなかったこと、同じようなアニリン染料であるフクシンが直後に発見されたことから大きな成功を収めたとは言いがたい。

構造

モーベインA(左)とモーベインB(右)の構造式(カチオン部分)
モーベインB2の構造式
モーベインCの構造式

モーブを構成する色素モーベインは主に2種類の色素モーベインAとモーベインBの混合物である。これらのモーベインの構造は1994年に確定した[3]。原サンプルの分析によってそれまで提唱されていた構造が間違っていたことが判明したのである。さらに2007年になって、新たにモーベインB2およびモーベインCが発見された[4]

パーキンの使ったアニリンはかなりの量のトルイジンを含んでいた。そのため、モーベインの構造中にはトルイジンに由来するメチル基がある。モーベインAはアニリン2分子と o-トルイジン1分子、p-トルイジン1分子が結合した分子式 C26H23N+
4
X
(X は対イオン)の物質であり、モーベインBはアニリン1分子と o-トルイジン2分子、p-トルイジン1分子が結合した分子式 C27H25N+
4
X
の物質である。

参考文献

  1. ^ a b c d 化学はじめて物語”. 日本化学工業協会. 2020年2月10日閲覧。
  2. ^ 安永秀計「染色機構と染色にまつわる話」『化学と教育』第68巻第10号、日本化学会、2020年10月、420-425頁、doi:10.20665/kakyoshi.68.10_420ISSN 03862151CRID 13905710397177143042023年5月10日閲覧 
  3. ^ Meth-Cohn, Otto; Smith, Mandy (1994). “What did WH Perkin actually make when he oxidised aniline to obtain mauveine?”. Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1 (The Royal Society of Chemistry) (1): 5-7. doi:10.1039/P19940000005. https://doi.org/10.1039/P19940000005. 
  4. ^ de Melo, J Seixas; Takato, S; Sousa, M; Melo, MJ; Parola, AJ (2007). “Revisiting Perkin's dye (s): the spectroscopy and photophysics of two new mauveine compounds (B2 and C)”. Chemical communications (Royal Society of Chemistry) (25): 2624-2626. doi:10.1039/B618926A. https://doi.org/10.1039/B618926A. 

関連項目


モーヴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/06 23:50 UTC 版)

夢見るゴシックシリーズ」の記事における「モーヴ」の解説

ミッドランド魔女王透視能力評判占い師「グウェンヤ」と名乗りバイロン卿助言するが、エドレッド警戒するかの女王」だとバイロン卿エドレッド看破されるエドレッド曰く「恋多く猛き女王」であり、武勇優れるも多情な女性エドレッド求婚した際、整理したとはいえ、7人の恋人抱えていた。家柄美貌財産武勇知性のどれを取ってエドレッド相応し女性自身だけだと自惚れ恋敵排除すればエドレッド手に入る思い込んだが、メアリア殺害罪状露見しており、拒絶され腹いせエドレッド呪いをかけて吸血鬼にした。強すぎる呪い反動転生繰り返すたびに自慢魔力弱まりエドレッド永劫生き地獄に幕を下ろしたのを見て転生することなく自らの魔力自身もまた消滅したエドレッド呪いをかけたことは後悔しているが、彼の幸福を壊した罪に対す謝罪をすることはなかった。

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「モーヴ」を含む「夢見るゴシックシリーズ」の記事については、「夢見るゴシックシリーズ」の概要を参照ください。

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モーヴ

出典:『Wiktionary』 (2021/07/30 10:54 UTC 版)

語源

英語 mauve < フランス語 mauve

異表記・別形

名詞

モーブ

  1. 1856年ウィリアム・パーキンにより発見された、世界初合成染料青みがかった色をする。
  2. 語義1のような色。

類義語

語義1

翻訳

合成染料


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