モデル化とあわせこみ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/20 23:09 UTC 版)
(数理モデル,モデル (自然科学)も参照)特に現代の科学においては、「真理とは何か」といった哲学的で捉えどころのない問題に比べ 「どのようなモデル、式、計算コードが最も現実をよく反映するのか」という問題が圧倒的に重要な意味をもつ。 このように、「現実の対象がどのように振る舞うか」に着眼する現代の科学では、結論の提示は、現実の物理現象・社会現象などを定性的/定量的に説明する具体的なモデルの提示という形で行われることが多い。モデルの良し悪しは、明確であることが求められると同時に、扱いやすさ、どれだけ多くの現実を説明できるかにかかっている。 モデル化とは、「牛を球と仮定する」という標語が教えるように、起こっている現象から本質と無関係と思われる部分をそぎ落としたものを作り、そこになんらかの法則をあてはめ、現象を再構築することである(詳細は数理モデル,モデル (自然科学)等を参照のこと。) モデルの提示方法には、例えば以下のようなものがある 1つのモデルを挙げ、そのモデルが実験をよく説明していることを示す。 いくつかの対等なモデルをいくつか挙げ、それをいくつかの論点から比較し最もよく実験を説明しているものを選ぶ。 複数の論点を挙げ、それぞれの論点についてモデルを1つ / 複数挙げ、妥当性を示す / 妥当なものを選択する。 モデルの構築方法の典型的な一例を以下に示す。 直観的に考え、もっともらしい「仮のモデル」を、議論の叩き台にするために提案する。 現実と合致するようにモデル、式、計算コードを調整する(調整されてできたモデルあるいはモデルの調整法をとりあえずのメカニズムと考える)。 そのモデルが、(少なくとも考えた中では)最もよく物事を説明していることを、統計学的な見地から評価する。 モデルを調整するのに用いた実験パラメータの物理学的な意味を次元解析等を参考に解釈する。特に萌芽的な研究においては、「ある程度幅をもった実験結果でも取り込めるような体系を作り、実験でパラメータを抜き出し、外挿によって近縁の系に対して予測を立てる」という手法がよく採られる。 特に萌芽的な研究においては、「ある程度幅をもった実験結果でも取り込めるような体系を作り、実験でパラメータ[要曖昧さ回避]を抜き出し、外挿によって近縁の系に対して予測を立てる(所謂「合わせこみ)」という手法がよくとられる。 このような「合わせこみ」をベースとした現象論的・現代的なモデル形成手法は、特に「物ができること」を重視する応用系の分野において顕著な成果を挙げており、現在のデータからより優れた物を作る指針として活用されている。素粒子論などの基礎的な分野においても、このような手法の活用に苦言を呈する者はいるが、少なくとも論文を書く上ではよく用いられている指針である。総じて言えば、基礎研究・応用研究の両方において強力な手法である。 特に基礎分野の研究に対する、現代的なモデル化手法の積極的な導入に対する苦言の根拠としては、現代的なモデル化は、モデルを調整するための変数があまりにも増えてしまうと、そもそも計算が困難になり、直観による見通しが利かなくなるという弱点があることがよく言われる。特に、素粒子理論などでは、現実を説明するためにどんどん新しい素粒子が仮定され、話がどんどん複雑になっていくということが問題視されている。単に「話がどんどん複雑になっていく」というだけでは「悪い」とは言えないが、一般に結論はシンプルであるほうがよいと考えられている。無論、明確な指導原理が得られないままパラメータが泥縄的に増えていく状況が生じた場合には、オッカムの剃刀という理念を再度思い起こす必要がある。
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