メルセデス・ベンツ・Sの登場(1927年)
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「モータースポーツにおけるメルセデス・ベンツ」の記事における「メルセデス・ベンツ・Sの登場(1927年)」の解説
市販車ながらSタイプが搭載するM06エンジンはスーパーチャージャーを使うことで230馬力もの出力を発生させることができたことから、レース仕様に改造された車両は1927年に参戦を始めるとすぐに高い戦闘力を発揮した。他チームの車両と区別しやすくするため、ノイバウア―の指示でボディは従来と同様にドイツのナショナルカラーである白に塗装され、Sタイプとその後継車両はその巨体から「ホワイト・エレファント」(白い象)と通称されるようになった。 1928年にはSタイプを発展させたSS(Super Sport)が製造され、同年にはSSからさらにレーシングカーとしての要素を強めて、275馬力のエンジンを搭載し、ホイールベースを短縮したSSK(英語版)(Super Sport Kurz)が登場し、やはりレースで活躍することとなる。これらの車両は乗用車として一般にも販売されたことから、自費でレースに参加するプライベーターたちにも活用された。 1928年限りで技術部長のポルシェがダイムラー・ベンツから去った後は、旧ベンツの設計主任で職位としてはポルシェと同格だったハンス・ニベルが同車の開発を引き継ぎ、1931年にSSKをより軽量化させたSSKL(フランス語版)(Super Sport Kurz Leicht)を完成させた。SSKLのエンジンには「エレファント」と呼ばれる巨大かつ強力なスーパーチャージャーが装着され、最大出力は300馬力まで向上した。スーパーチャージャーの大型化があったにも関わらず、SSKLではSSKと比較して車両全体で125㎏の軽量化が達成された。 レースにおけるSシリーズの活躍はメルセデス・ベンツのイメージにとって大きな宣伝効果をもたらし、メルセデス・ベンツの名で売られている全ての車種が高級車とみなされるようになり、機構としては平凡な中級車に過ぎない370S(英語版)(W10)まで、外観はSシリーズに似ていると言えなくもないことから「中級の素晴らしいスポーツカー」と讃えられるようになった。ニベルはSシリーズで培ったスーパーチャージャーの知見を市販車に積極的に取り入れていき、元々の得意分野である独立懸架式サスペンションなどの足回りの技術を大型高級車から小型車まで乗り心地の良さという形で導入し、ダイムラー・ベンツは1930年代前半に770/770K(W07)、170(W15)、500K(英語版)(W29)をはじめとした数々の名車を世に送り出すこととなる。
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