ムセ大統領 / イスラム法廷会議、ソマリランドとの対立
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「プントランドの歴史」の記事における「ムセ大統領 / イスラム法廷会議、ソマリランドとの対立」の解説
2005年1月、選挙の結果、将軍のモハムード・ムセ・ヘルシが大統領に選ばれた。(ムセ・ヘルシは姓ではなく、父・祖父の個人名をつなげたものであるが、この人物は「ムセ大統領」「ヘルシ大統領」とされることが多い。この記事ではムセで統一する。)また、プントランドは独立国ではなく、ソマリア暫定連邦政府を構成する自治州となった。2005年以降には、各地区の行政は、氏族を基本単位とした地区評議会が中心となって決めることになった。ムセはオスマン・マハムード支族であり、新政権はオマル・マハムード支族とオスマン・マハムード支族の連立政権の形となった:260。 なお、このころからソマリア沖の海賊の活動が本格化した。プントランド政府は公式には海賊との関係を否定しているが、大統領選には多額の費用が必要であり、その資金源と海賊行為の関係を疑う者もいる:261。 2005年3月、ムセ大統領はプントランド最大の商業都市のボサソ空港(英語版)の改修を計画した。ムセ大統領はボサソ空港に足を運び、2006年に着工した。2008年には新ターミナルビルが完成しており、ムセ大統領は2007年8月にも現地視察している。(その後は資金難などが原因で難航したが、ムセ政権終了後の2012年に資金の目途が立ち、2013年に入札式、2014年に着工、2016年1月にリニューアルオープンした。) 2006年11月、ソマリア南部で作られたイスラーム原理主義組織であるイスラム法廷会議が勢力範囲を徐々に北方に伸ばし、プントランド南境の都市ガルカイヨから南西に数10キロ離れた位置にあるバンディラドレイ(英語版)が占拠されたことが伝えられた。イスラム法廷会議のモハメド・モハマド・ジャマ(Mohamed Mohamud Jama)は次にガルカイヨに侵攻する旨を表明した。ガルカイヨは北半分をプントランドが、南半分をハウィエ氏族が支配している都市であった。このときまで、イスラム法廷会議はプントランド支配地域への侵攻表明を避けていた。プントランド大統領のムセは問題が宗教化することを避けるため、プントランドはイスラム法に従って治めていくがその方法はイスラム法廷会議とは異なるものである、との声明を発表した。 2007年4月、ムセ大統領はアラブ首長国連邦の構成国であるラアス・アル=ハイマ首長国を訪問し、当時皇太子だったシェイク・サウド・ビン・サクル・アル・カシミ(英語版) と面談している。この会談で、プントランドとラアス・アル=ハイマ両地域のビジネス協力を強化する経済協定が署名された。さらにはプントランド炭化水素開発会社(Puntland Hydrocarbon Development Company LLC)を設立する契約にも署名した。さらにはプントランドのインフラ計画を進める計画、ソマリアからの輸入家畜用の検疫施設設立の契約にも署名された。 2007年7月、プントランド西部の一部で、ダロッド族ハルティの支族であるワルサンガリ(英語版)がマーヒルとして独立を宣言した。プントランドの行政をマジェルテーンが仕切っていることに反発したことによるものだった。 2007年10月には、プントランド西隣のソマリランドが、プントランドが支配権を主張しているスール州の都市ラス・アノドを占領した(プントランド・ソマリランド紛争の始まり)。 2007年12月、ラスカノード侵入に関してソマリランドとムセ大統領の間に密約があったとして、スール出身議員が質問を出し、プントランド議会は紛糾した。同じ12月にムセ大統領は北ガルカイヨ地区評議会の解散を命じ、北ガルカイヨをプントランド政府が直接支配することを表明した。これを皮切りに、ムセ大統領はプントランド政府の権限を強めていった。ムセ大統領は翌年1月にはラスカノードを奪還することを宣言している。 2008年8月に、ワルサンガリ出身の将軍アブデゥリアヒ・フメド・ジャマ(英語版)がマーヒルに戻り、プントランド大統領選への出馬を表明し、プントランド内でのマーヒル地域の待遇を改善することを約束した。ジャマはマーヒル住民の歓迎を受けた。マーヒルもソマリランドからも攻撃を受けていたので、2009年にプントランド復帰を決めた。 2008年10月、ムセ大統領はアラブ首長国連邦の会社ルーターグループ(Lootah Group)と、1.7億UAEディルハム(約50億円)で空港、港、高速道路などの建設を行う契約に署名した。
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