ホジソンとマクニールの理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 05:00 UTC 版)
「火薬帝国」の記事における「ホジソンとマクニールの理論」の解説
火薬帝国という概念はシカゴ大学のマーシャル・ホジソンとウィリアム・ハーディー・マクニールによって提唱された。ホジソンは1974年の著作『The Venture of Islam』の第3巻に"The Gunpower Empires and Modern Times"というサブタイトルを付けた。ホジソンは、モンゴル帝国の後にアジア中西部の主導権を握った、不安定で地理的な制約を受けたチュルク系民族の諸国家を、中世後期の「軍事的パトロン国家」が一掃した事象について、火薬兵器が鍵を握っていると位置付けた。ホジソンは「軍事的パトロン国家」を次のように定義している。 一つ目に、王朝の独立した法が整備されていること。二つ目に、軍が統一された単一の国家という概念があること。三つ目に、すべての経済的・文化的な資源を、軍を握っている一族(王族)の有するものとして説明しようという試みがなされていること。 このような指標はモンゴル帝国の偉大さを説明する指標としては当てはまらないが、この指標を満たせば、より後の時代の官僚機構の整った安定的な帝国を形成できるとした。しかしそれは、火薬兵器の登場と、軍隊を生活の中心とする兵たちによる技術の成熟があってこそのものであるともされた。 マクニールは、「新兵器である大砲の独占がかなったとき、中央政府はより広い領土を、新たな、もしくは新たに統合された帝国に統一することができる。」と説いた。特に「独占」が重要であった。ヨーロッパでは15世紀の段階ですでに大砲技術が進歩していたが、それらを独占できた国は無かった。銃火器の鋳造技術はスヘルデ川・ライン川河口付近の低地地方で発展したが、この地域はフランスとハプスブルク帝国に分割された結果、火器の登場の意義は軍事的な革命の域にとどまった。これに対し、西アジア、ロシア、インド、そしてより変則的な類型としては中国や日本においても、火器の独占に成功した勢力による軍事的な拡張と帝国の形成がみられた。
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