ペレルマンとポアンカレ予想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 04:11 UTC 版)
「グリゴリー・ペレルマン」の記事における「ペレルマンとポアンカレ予想」の解説
arXiv で以下の3つのプレプリント (Preprint) を発表し、ポアンカレ予想を解決したと宣言した。 The entropy formula for the Ricci flow and its geometric applications, 2002年11月11日 Ricci flow with surgery on three-manifolds, 2003年3月10日 Finite extinction time for the solutions to the Ricci flow on certain three-manifolds, 2003年7月17日 彼は、ウィリアム・サーストンの幾何化予想(ポアンカレ予想を含む)を解決して、その系としてポアンカレ予想を解決した。そして、そのときに採用した手法も、リチャード・S・ハミルトンの発見したリッチ・フロー (Ricci flow) (ハミルトン・ペレルマンのリッチ・フロー理論)と統計力学を用いた独創的なものである。ペレルマン論文に対する検証は、国際的な数学者の協力のもと2006年夏頃まで続き、以下の三つの研究チームの検証論文が提出された。以下の検証論文は、いずれもペレルマンの証明は基本的に正しく、細部の誤りに関してもペレルマンの手法により修正可能である、と結論付けている。これにより、少なくともポアンカレ予想については、ペレルマンにより証明されたと考えられている。 ブルース・クライナーとジョン・ロット, Notes on Perelman's Papers(2006年5月)ペレルマンによる幾何化予想についての証明の細部を解明・補足 朱熹平と曹懐東、A Complete Proof of the Poincaré and Geometrization Conjectures - application of the Hamilton-Perelman theory of the Ricci flow(2006年7月、改訂版2006年12月)ペレルマンの証明で省略されている細部の解明・補足 ジョン・モーガンと田剛、Ricci Flow and the Poincaré Conjecture(2006年7月)ペレルマンの証明をポアンカレ予想に関わる部分のみに絞って詳細に解明・補足 2006年度、ポアンカレ予想解決の貢献により「数学界のノーベル賞」と言われているフィールズ賞(幾何学への貢献とリッチ・フローの解析的かつ幾何的構造への革命的な洞察力に対して)を受賞した。しかし、「自分の証明が正しければ賞は必要ない」として受賞を辞退した。フィールズ賞の辞退は、彼が初めてである。ペレルマンは、以前にも昇進や欧州の若手数学者に贈られる賞を辞退するなどした経緯があり、賞金に全く興味を示さなかったり、自分の論文をあまり公表したがらない性格でも知られていた。一方で、アメリカの雑誌 The New Yorker の取材に対しては、誰を証明の貢献者とするかの争いについて言及した上で、「自分が有名でなければ、数学界の不誠実さについて不満を述べるという醜いことをせずに、黙ってペットのように扱われておくことができるが、有名になると何かを言わなければならなくなる」と答えている。 2010年3月18日に、クレイ数学研究所は、ペレルマンがポアンカレ予想を解決したと認定して、ミレニアム賞(副賞として100万ドル)授賞を発表した。彼は、2010年6月8日の授賞式に姿を見せなかったが、クレイ数学研究所の所長は「選択を尊重する」と声明を発表し、賞金と賞品は保管されるという。同年7月1日にロシアのインテルファクス通信がペレルマンの話として伝えたところによると、受賞を断った理由は複数あるが、ハミルトンのリッチ・フロー発見に対する評価が十分でないことなど、数学界の不公平さに異議があることをその主たるものとして挙げたという。これを受けて、クレイ数学研究所は、同年秋までに賞金の使途を数学界の利益になる形で決定すると述べた。 2011年4月、映画プロデューサーの Aleksandr Zabrovsky が彼に関する映画を作ることで合意し、彼へのインタビューを公開した。しかし、これには彼の発言の矛盾点が指摘された。そのため、多くのジャーナリストは、このインタビューは「捏造の可能性が高い」としている。
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