フツ・パワーの高まり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/28 00:09 UTC 版)
「フツ・パワー」の記事における「フツ・パワーの高まり」の解説
1990年以降、ルワンダ政府中枢のフツ過激派を中心として、かつてのカイバンダ政権時代に主張されていたフツ・パワーが再び取り上げられるようになった。ハッサン・ンゲゼ (en:Hassan Ngeze) は、ルワンダ政府に批判的なツチ系の雑誌『カングカ』を真似た『カングラ』を創刊して同誌の編集長となったが、これはアカズからの指示を受けて行われたことが明らかとなっている。この『カングラ』は、政府に対する一応の批判を行いつつも、主たる目的はツチに対する侮蔑感情の煽動であった。また、この雑誌のツチに対する攻撃姿勢は、植民地時代以前の経済的優遇を非難することよりも、ツチという民族そのものを攻撃することが中心となっていた。この、急進派のフツ・パワーを主張する雑誌の言論を代表するものとしては、ンゲゼにより執筆された「フツの十戒」がある。悪名高きこの「フツの十戒」は、ツチに対する個人的対応や社会的対応、フツはツチを如何に扱うべきか等を扱ったもので、その内容からフツ・パワーイデオロギーの公式理念と呼ばれ、学校や政治集会などの様々な場面で読み上げられたことが知られている。 また、ミルコリンヌ自由ラジオ・テレビジョン (en:Radio Télévision Libre des Mille Collines : RTLM) は、フツ過激派が国営のラジオ・ルワンダから排斥されて以降、フツ過激派によるヘイトスピーチの拠点となっていたラジオ局であった。同局は、ツチに対する寛容さを無くすよう主張し、フツの十戒を繰り返し報道し、フツ・パワーのイデオロギー確立を目的とした偏向報道を行った。さらに、後のルワンダ虐殺勃発時には、アカズを含めたフツ過激派にとって政治的、社会的に脅威であると想定されたツチを根絶やしにするため、人々を動員し、虐殺へと煽動した。さらに、政治家であったレオン・ムゲセラ (en:Léon Mugesera) は、同ラジオで演説を行い、聴衆に向かって「恐れないで下さい。そして、あなたが他の誰かの首を落とさないことは、他の誰かがあなたの首を落とすことに繋がるだろうということを知って下さい。…(中略)…彼らに荷物をまとめさせ、出発させて、そして(彼らが再び)会話をするためにこの地へ戻ったり、彼らが旗であると主張するゴミクズを再び持ち込んだりする行為は唯の一人として行わせない!」と訴えかけた。 また同ラジオ局はツチに言及する場合、ルワンダ語でゴキブリを意味するイニェンジ(inyenzi) の語を広く用いていたことが知られている。
※この「フツ・パワーの高まり」の解説は、「フツ・パワー」の解説の一部です。
「フツ・パワーの高まり」を含む「フツ・パワー」の記事については、「フツ・パワー」の概要を参照ください。
- フツ・パワーの高まりのページへのリンク