フォボスとダイモス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 04:02 UTC 版)
火星の月であるフォボスの見かけの大きさは、地球で見られる満月の角直径の約3分の1である。一方、ダイモスはほとんど星のような点に見え、円のような形はほぼ認識できない。 フォボスは非常に速く周回し(3分の1太陽日以下の周期)、西から昇り東に沈むが、これは1太陽日につき2回起こる。一方、ダイモスは東から昇り西に沈むが、火星日よりも数時間だけ遅く周回するので、地平線上に約2.5太陽日とどまる。 フォボスの「満月」の最大の明るさは、約-9または-10であるが、ダイモスの場合、約-5である。それに対し、地球から見られる満月は、-12.7でかなり明るい。フォボスは地上に影を落とすくらい十分明るく、ダイモスは地球から見た金星よりも少し明るい。地球の月のように、フォボスとダイモスは両方とも満月になる前の段階ではかなり暗い。地球の月とは異なり、フォボスの満ち欠けと角直径は時々刻々と変化し、ダイモスは、その満ち欠けを肉眼で見るには小さすぎる。 フォボスとダイモスはどちらも低傾斜の赤道軌道を持っており、火星にかなり近い軌道を描いている。その結果、フォボスは北緯70.4度の北側または南緯70.4度の南側の緯度からは見えない。ダイモスは、北緯82.7°の北側または南緯82.7°の南側の緯度からは見えない。高緯度(70.4°未満)にいる観測者は、フォボスの距離が遠いため、その角直径(見かけの大きさ)は著しく小さくなる。同様に、フォボスを赤道上から観測すると、それが頭上であるときと比較し、それが昇る/沈むとき、角直径は非常に小さくなる。 火星から観測すると、フォボスの太陽面通過とダイモスの太陽面通過を見ることができる。フォボスの通過は、フォボスによる部分日食とも呼ばれる。フォボスの角直径は、太陽の角直径の半分もあるからである。しかし、ダイモスの場合は、「通過」という用語が適切である。なぜなら、それは太陽の円盤上に小さな点として現れるからである。 フォボスは低傾斜の赤道軌道を周回しているので、火星の表面に投影されたフォボスの影の緯度には季節変動があり、極北から極南へ動き再び戻ってくる。 火星上の任意の固定された地点では、火星における2年間隔で、影がその緯度を通過する。影が同一地点を通過するまでの間において、数週間のうちに約6回のフォボスの太陽面通過がその地点で観察される。これはダイモスでも同様であるが、ダイモスの場合は、その間に太陽面通過の発生は0か1回だけである。 春分と秋分に影が赤道を横切るとき以外、「冬半球」において影を見ることは容易である。このようにフォボスとダイモスの太陽面通過は、北半球と南半球での火星の秋と冬の間に起こる。赤道近くでは、秋分と春分を中心に発生する傾向がある。赤道から離れると、冬至の近くで起こる傾向がある。どちらの場合も、太陽面通過が起こる間隔は、冬至の前後でほぼ対称的である(ただし、火星の軌道の偏心が大きいと、真に対称性とはならない)。 火星ではフォボスとダイモスの月食も観測できる。フォボスの場合、火星の影に約1時間は入っており、ダイモスの場合、約2時間である。 驚くべきことに、その軌道が火星の赤道の平面内にほぼあるにもかかわらず、また非常に火星に近い距離にもかかわらず、フォボスが食を逃れる時がある。 フォボスとダイモスはどちらも自転と公転が同期している。つまり、火星上からは見えない「裏側」がある。フォボスの軌道の傾きと偏心度は低いにもかかわらず、地球の月の場合と同様にフォボスにも秤動の現象が起こる 。高低緯度での観測およびフォボスの日没での観測をすることによって、近距離の視差と秤動のために、火星表面上のある場所または別の場所から、ある時期に見えるフォボスは、その全表面の50%より多くの部分を観測できる。 フォボス最大のスティックニー・クレーターは、一方の端に沿って見える。そのクレーターは火星の表面から肉眼で簡単に観測できる。
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