バーニー式(バーニー砲)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 01:18 UTC 版)
「無反動砲」の記事における「バーニー式(バーニー砲)」の解説
イギリスの発明家であり兵器開発者でもある、チャールズ・デニストン・バーニー卿(Charles Dennistoun Burney, 2nd Baronet(英語版)によって発明された方式で、後方にガスを放出することで反動を軽減する点はクルップ式と同様だが、発射ガスは直接後方に噴射せず、側面に噴出孔を設けた薬莢から噴出したガスを薬室の周囲の空間に導き、適度な初速を得るのに必要な砲腔圧力を発生させた後、砲尾から噴出させることはクロムスキット式と同様である。バーニー式ではガス噴出ノズルを複数設けて後方噴射を分散させることにより、クルップ式やクロムスキット式に比べて後方危険界を縮小しつつ、充分な砲腔圧力が確保される点が異なる。 クルップ式に比べて軽量化に優れ、同量の発射薬で発射する砲弾の初速を高くすることができ、初速を求めなければ大口径大重量の砲弾を発射できる利点を持っていたが、複数の噴射ノズルを持つため閉鎖器周りの構成が複雑で、ノズルが装填作業の邪魔になるという問題があった。重く複雑な閉鎖器が必要なことはクルップ式と同じで、発射を繰り返すと噴出ノズルの圧力弁が噴射ガスによる摩擦と圧力により腐蝕・摩耗し、所定の砲腔圧力を発揮できなくなり、反動軽減能力が不安定になるという問題も同様に発生する。 バーニー砲は戦間期にバーニー卿による個人的研究として始められ、卿は4ゲージ(散弾直径 1.052 インチ(26.7 mm)の散弾銃弾薬を用いて最初の実証品を製作し、1940年代初頭にはスウェーデンでクルップ式無反動砲に類似した構造を持つ対戦車ライフル、カールグスタフ pvg m/42を開発している。この際の経験を基にバーニー卿は第二次世界大戦中に独自の理論に基づく新型無反動砲の研究を進め、既存のものとは異なる発射形式の新型として完成させた。卿の名を取って“バーニー砲”と通称されるようになったこの新型砲は、戦争末期より大戦後にかけて実用化と配備が進められ、歩兵の用いる口径3.45インチ(約8.77センチ)の携行型から7.2インチ(約18.3cm)及び8インチ(203mm)の大口径砲まで各種が開発されたが、上述の構造的な問題と、戦争が終結したことによる軍備の縮小により、大規模な導入は行われずに終わった。無反動砲自体は大戦後のイギリスでも新規に開発されて装備されているが、それらはいずれもクルップ式に準じた作動方式のものであり、バーニー砲は採用されていない。 なお、対戦車砲弾の一つである粘着榴弾(HESH)は、元々はバーニー砲で使用する対コンクリート構造物用砲弾として、“Wall buster”の名称で開発されたものである。バーニー砲自体は広く導入されなかったものの、粘着榴弾はその後もイギリスを始め世界各国で対戦車・対強化構造物用弾頭として用いられている。 詳細は「粘着榴弾」を参照
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