ハアブとは? わかりやすく解説

ハアブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/28 09:21 UTC 版)

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18と1の月で構成されるハアブ暦の周期。

ハアブ(haab[† 1]) は、マヤ文明において、365日を一周期とする暦である。20日が1ヶ月となる18の「月」と、名前を持たず不吉だとされる5日間で構成されている[1][2]ハアブ暦おおよその1年とも[3]

概要

ハアブ暦は、18の「月」と、0から19まで、または1から20までの数字が順次組み合わさってできる暦になっている[1]。便宜的に0とされている文字は「着座の文字」と呼ばれ、その月が支配の座につくことを表す。

マヤでは、時はそれぞれの神に支配されていて、「日」の神、「月」の神、「年」の神がいると考えられていた。その月が支配の座につくということは、その「月」の神が支配の座につくと同義である。20日たったら、次の「月」の神に支配の座を譲るという考えかたが暦に反映されている。

18の「月」は以下のとおりである。

  1. ポプ[† 2] (Pop[† 3])
  2. ウオ[† 4] (Wo[† 3])
  3. シプ[† 5] (Sip[† 3])
  4. ソッツ[† 6] (Sotz'[† 3])
  5. セック[† 7] (Sek[† 3])
  6. シュル[† 8] (Xul[† 3])
  7. ヤシュキン[† 9] (Yaxk'in[† 3])
  8. モル[† 10] (Mol[† 3])
  9. チェン[† 11] (Ch'en[† 3])
  10. ヤシュ[† 12] (Yax[† 3])
  11. サック[† 13] (Sak[† 3])
  12. ケフ[† 14] (Keh[† 3])
  13. マック[† 15] (Mak[† 3])
  14. カンキン[† 16] (K'ank'in[† 3])
  15. ムアン[† 17] (Muwan[† 3])
  16. パシュ[† 18] (Pax[† 3])
  17. カヤブ[† 19] (K'ayab[† 3])
  18. クムク[† 20] (Kumk'u[† 3])

以上の360日間(20日×18ヵ月)に、5日間のワイェブ[† 21] (Wayeb[† 3]) が加わって365日となる。ただし現代の暦にみられる閏年がなかったため、ハアブは太陽の運行や季節と次第にずれていった。しかしマヤ人たちはその事を理解した上で暦を使用していた[1][3]

この暦(ワイェブを除く)とツォルキン(暦)が組み合わされて約52年で1周期の暦となる。これをカレンダー・ラウンド[4](rueda calendárica)という。

月を表すマヤ文字

ハアブ暦の各月の儀式、特色等

一部の月について説明する。

  • ポプは、最初の月の名称。ジャガーが守護動物とされた。宴会や踊りも交えた新年の儀式が行われ、あらゆる階層の者たちが参加した。また全ての神々も、時を守るという名目で祭儀の場に集められた(ランダは、「偶像」と記している[要出典])。人々は家財道具を全てこの日に新調し、ゴミや古道具類はゴミ捨て場に捨てた[5]
  • ウオは、2番目の月の名称。守護神はイツァムナーで、祭儀の合間には神官が鳥占いの結果と託宣を発表した。祭儀の後には、「月の踊り」(オコト・ウィル)という踊りが踊られることもあった。祭儀には、猟師、漁師、宗教的な医師でもある神官、巫女だけが参加したが、他の階級の人々も自分達の守護神に儀式を捧げたという[6]
  • シプは、3番目の月の名称。守護神は蛇に似せて描写される神であるが、該当する神は不明である[6]
  • ソッツは、4番目の月の名称。コウモリが守護動物とされたこと以外には詳細は不明である[7]
  • セックは、5番目の月の名称。セックの祭りの日がやってくると、養蜂者たちは、の神と4柱のバカブ神(とくにホブニル・バカブ)への儀式を催して今年の収穫を願った。祭りの最後には、蜂蜜をバルチェの木の樹皮と混ぜて作った発酵酒を飲んで、神を称えた[7]
  • シュルは、6番目の月の名称。守護神については、よくわかっていないが、この月の16日には全ての住民が参加する重要な祭りである「チック・カバン」(「道化の祝宴」)が行われた。この祭りは、ククルカンに捧げられていた[8]
  • ケフは、12番目の月の名称。「新しい火の祭り」という儀式が行われたということ以外詳しいことはわかっていない[9]
  • カンキンは、14番目の月の名称。この月に行われる儀式や祝宴、守護神については記録がないので不明である[10]
  • カヤブは、17番目の月の名称。守護神はまだ特定されていない。この月には特別な儀式もなく、人々は新年の祭りに備えて休養した[11]
  • クムクは、18番目の月の名称。守護神はまだ特定されていない。この月には特別な儀式もなく、人々は新年の祭りに備えて休養した[11]

脚注

注釈

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  1. ^ コウ (2003) 137頁で確認した綴り。
  2. ^ ポプは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した綴り。
  4. ^ ウオは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はウォ
  5. ^ シプは、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。ほか、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称はシップ
  6. ^ ソッツは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。ほか、ロンゲーナ (2002) 106頁で確認した名称はソツ
  7. ^ セックは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はセクロンゲーナ (2002) 106頁で確認した名称はツェク
  8. ^ シュルは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  9. ^ ヤシュキンは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  10. ^ モルは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  11. ^ チェンは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  12. ^ ヤシュは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  13. ^ サックは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はサク
  14. ^ ケフは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  15. ^ マックは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はマク
  16. ^ カンキンは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  17. ^ ムアンは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はムワン
  18. ^ パシュは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  19. ^ カヤブは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  20. ^ クムクは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
  21. ^ ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称はウアエブコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はワイェブロンゲーナ (2002) 114頁で確認した名称はウァイェブ

出典

参考文献

関連項目


ハアブ

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マヤ暦」の記事における「ハアブ」の解説

詳細は「ハアブ」を参照 ハアブにおける月名表記配列番号標表記/ユカテコ語表記発音マヤ文字表記 配列番号標表記/ユカテコ語表記発音マヤ文字表記0Pop/Pop(ポプ) 9Yax/Yax(ヤシュ) 1Wo'/Uo(ウオ) 10Sak'/Zac(サク) 2Sip/Zip(シプ) 11Keh/Ceh(ケフ) 3Sotz'/Zotz(ソッツ) 12Mak/Mac(マク) 4Sek/Tzec(ツェク) 13K'ank'in/Kankin(カンキン) 5Xul/Xul(シュル) 14Muwan'/Muan(ムアン) 6Yaxk'in'/Yaxkin(ヤシュキン) 15Pax/Pax(パシュ) 7Mol/Mol(モル16K'ayab/Kayab(カヤブ) 8Ch'en/Chen(チェン) 17Kumk'u/Cumku(クムク) 18Wayeb'/Uayeb(ワイェブ) ハアブ暦は、1ヶ月20日18の月と、「ワイェブ」と呼ばれる年末に付け足される5日間の日で構成されている。ワイェブの5日間は、当時では不吉な日だと考えられていた。フォスター2002年、「ワイェブの期間中人間界地底の間のポータル解散した境界線は、悪霊災害引き起こすことを妨げなかった。」と記した悪霊避けるため、マヤ暦使用する地域などでは、ワイェブの期間中に独自の習慣儀式行っていた。その一例としては、人々は家を離れる事や、髪を洗ったかけたりする事を避けていた事などが挙げられる1982年にブリッカーは、ハアブは紀元前550年頃から、冬至出発点として使用されるようになった推定している。 現在、ハアブ暦における月の名前は、16世紀ディエゴ・デ・ランダやチュマイェルのチラム・バラム予言書などによって書き写され資料における、植民地時代ユカテコ語対応する名前知られている。先コロンブス期マヤ文字書かれ碑文に基づくハアブのグリフネームの音韻分析結果によれば、これらの20日間分のグリフネームは、地域や期間によってかなり変化していることを示している。これは、スペイン語ソースによる記録先立つ古典期後古典期基本言語とその使われ方相違反映している。 ハアブ暦日付は、その月における日付とそれに続く月の名前によって識別された。日付はその月の0日とみなされる指定された月の「座席」を意味するグリフから開始される。ただし一部では、この日は指定され月の前月の20日として扱われる場合もある。後者場合ポプ座席日付は5ワイェブとなる。多く場合、年の最初の日は0Pop(ポプ座席)だった。これに続いて1Pop、2Pop…19Pop→0Wo、1Wo…というように続けられた。 ハアブ暦における1年正確な365日であり、実際太陽年における残り4分の1日については無視した。これは季節毎年4分の1日ずつ、暦年に対してずれていたことを意味し特定の季節にちなん命名され月名は、数世紀後にはこの季節対応しなくなった

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