ドーパミンと自発性まばたきの関連性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 09:14 UTC 版)
「まばたき」の記事における「ドーパミンと自発性まばたきの関連性」の解説
自発性まばたきの頻度は、脳内神経伝達物質の一つであるドーパミンの増加と関連することから、ドーパミン作動性神経系の非侵襲的な間接指標として用いられることがある。その根拠は以下の知見からなる。 ヒト、サル、齧歯類においてアンフェタミンなどのドーパミンアゴニスト投与により増加し、ドーパミンアンタゴニストによって減少する。 サルを用いた研究にてポジトロン断層法により計測された線条体のドーパミンD2/3受容体数と正の相関関係がみられる。 黒質線条体系のドーパミン神経細胞が減少するパーキンソン病患者では少ない。これは、パーキンソン病治療薬であるレボドパの摂取によって一部回復する。 ドーパミンの過活動が仮説の一つとして挙げられる統合失調症患者で多い。 ドーパミンD2/D3受容体の減少が起こるとされるコカイン使用者では健常者に比べて少ない。 ドーパミン作動性神経系が重要な役割を果たす認知機能(実行機能、創造性)、報酬系行動と密接な関係がある。 快刺激により増加する。 自発性まばたき時にはドーパミン作動性神経系の中心的な投射先である大脳基底核(尾状核、側坐核を含む腹側線条体)の活動が高まる。 ドーパミンが自発性まばたきを誘発する神経機構としては、ドーパミン作動性神経系が投射する大脳基底核から三叉神経複合体(まばたきの調節機構の第一候補)への神経入力が関与していると考えられている。 ドーパミンと自発性まばたきの関係に対して否定的な研究も一部報告されているが、近年のレビューを含むこれまで蓄積された多く研究で肯定されている。現状では、ヒトで脳内ドーパミンの変化を計測するためには、軽微ながらも被爆を伴うポジトロン断層法に限られるため、神経薬理学分野において非侵襲的な自発性まばたきは脳内ドーパミン作用を確認する有用な指標であるとされる。 さらに最近では、ニコチン受容体(中脳ドーパミン神経細胞の前シナプスに存在)遺伝子多型で差があることや、自発性まばたき時にはデフォルトモードネットワーク(記憶・学習を司る海馬を含む)が活性化すること、左角回の体積と正の相関がみられることが、大阪大学の中野らの研究により報告されており、ドーパミンの活動と関連もしくは並行して様々な神経機構が自発性まばたきの頻度に影響している可能性ある。
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