トロイダルCVT
世界で初めて日産車に実用化され、ディスクとパワーローラーという回転体から構成され、これらを相互に強く押し付けて力を伝える無段変速機構。ディスクとローラーの接触点を動かし、回転半径を変化させることにより変速させる。この機構を電子制御により連続的に段付きなく適切な変速比で制御して理想の駆動力を実現している。滑らかな変速機能と燃費や動力性能のよさを特徴とする。
トロイダルCVT
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 16:03 UTC 版)
フリクションドライブを高度に発展させた形態である。入力軸に繋がった円盤(インプットディスク)と出力軸に繋がった同形状の円盤(アウトプットディスク)を向かい合わせ、各ディスクの間には複数の転輪(パワーローラー)の外周部分が強い力で挟まれて動力を伝達する。パワーローラーの傾斜角を変化させるとそれに応じて2枚のディスクの回転数の比も変化し、可変変速比が得られる。着想自体は古くから存在したが、非常に高い圧力下で摩擦と潤滑を両立させての精密作動が要求されるため、実用化は極めて困難であった。 実用化に至った事例では、日産がジヤトコ・トランステクノロジー(ジヤトコ)、日本精工(NSK)、出光興産と共に開発、1999年に発表した「ハーフトロイダル式」とイギリスのトロトラックが光洋精工と共に開発し2003年に発表した「フルトロイダル式」とがある。両者の違いは入・出力ディスクの形状とそれに挟まれたパワーローラーの接し方であり、フルトロイダルでは窪みのあるディスクでパワーローラーを挟み込むのに対し、ハーフトロイダルでは漏斗状のディスクにパワーローラーを押し当てて駆動する。フルトロイダル式は「線」で接する円盤形パワーローラーを用いており、ローラーの厚みの分だけそれぞれのディスクに接する位置が異なって半径に差ができるため、強制スリップ(スピンロス)の発生は避けられない。対するハーフトロイダル式は、ほぼ「点」で接する球形パワーローラーの伝達効率が高く、スピンロスもほとんど発生せず、理想に近いとされる。一方でハーフトロイダル式はパワーローラーを常に強い力で押し付け続けなければならず、軸受部でのトルク損失が大きいため、両方式の効率はほぼ同等と考えられる。 しかしフルトロイダルCVTは製品化されず、ハーフトロイダルCVTも有望視されながら、コスト面の課題から自動車用としては生産を終了している。自動車以外の用途では、固定翼哨戒機P-1に搭載される川崎重工業ガスタービン・機械カンパニー(現:航空宇宙システムカンパニー)製の一定周波数発電装置「T-IDG」に使用されている。 実用化にあたっては高圧下において高粘度化(ガラス転移)するトラクションオイルを介し動力を伝達すると言うトラクションドライブ形式となった。トラクションドライブ自体は産業機械で減速機などに用いられている。自動車関連では後付けの遠心式スーパーチャージャーの増速機に用いられている。トラクションオイルはその特性から一般的な車両用オイル(エンジン油・ギヤ油・ATF・CVTFなど)とは基油の分子構造から異なるため専用品以外は使用出来ない。
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