トランスジェンダー描写に対する批判と見解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 05:57 UTC 版)
「ミッドナイトスワン」の記事における「トランスジェンダー描写に対する批判と見解」の解説
とくに主演としてトランスジェンダーを演じた草なぎ剛が賞賛を浴びる一方で、映画に対して一部のLGBT当事者や専門家からの批判も起きた。 作中ではトランスジェンダーの主人公が性別適合手術後のアフターケアを怠ったことで死亡するという描写があるが、これに関して岡山大学病院の産婦人科医でGID(性同一性障害)学会の理事長を務める中塚幹也は、現実的には考えにくいと語っている。トランスジェンダーの映像表象における問題について執筆しているライターの鈴木みのりも同様に性別適合手術に関する描写の問題点を指摘している。LGBTに関する情報を発信している一般社団法人fairの代表理事である松岡宗嗣は、ドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして(英語版)』を取り上げつつ、シスジェンダーの男性がトランスジェンダー女性を演じることの弊害を論じている。 これらの意見に対し、本作の内田英治監督は「僕のようなシスジェンダーがトランスジェンダーを題材にして、悲しみを映画にする部分への批判とかは当然あると思うんですよ」と前置きした上で、「でも、その問題自体を、誰も知らない、無知なままでは何にもスタートしないと思うんです。日本のように、理解が広がっていない状況では、トランスジェンダーに対する無知、無感覚こそが一番の問題、というのが僕の考え」であるとして、「この映画を娯楽映画として、エンターティメント作品として成立させることによって多くの人が観て、多くの人が考えるきっかけになればいい」「普段こういった問題に接しない人たちにも観てもらうため、メジャーな場で広く観てもらうことが重要だと思いました。」と述べている。 キャスティングについては、「トランスジェンダーの役にはトランスジェンダーの俳優を、という世界的な流れがあるのは十分承知しています。日本もいずれはそうなるべきだと思っていますが、残念ながら、日本はそのスタート地点にも立ってないという状況」であると述べ、「この映画は、多くの方が観てくれる作品にすることがまず大事だと感じていました。そのためには、演技がちゃんとできて、日本で広く認知されている方ということで、草彅さんにオファーさせていただきました。」と真意を明らかにしている。 脚本に関しても、「海外の知人に見せたところ「え、こんなの今時あるの?日本はまだそんな感じなの」と、僕も差別を強調しすぎたんじゃないかと、さんざん悩んだ」「でもある日、新宿を歩いていたら三人組のサラリーマンが誰にも聞こえる大きな声で、恐ろしい差別発言をしながら歩いてて。それを目の当たりにして、この脚本は全然強調してないという自分なりの結論に至りました。」と語っている。 実際、本作を紹介した東スポWebの記事にてトランスジェンダー女性の主人公について「女装オネエ」と表現したことが問題視された。また、足立区議がLGBTに対し差別的な発言を行ったことで非難が殺到した。内田はこの件について「本当に言葉にならないくらい許しがたい発言だと思っています」と批判し、「この映画は、LGBT含めさまざまな問題において無知な部分が多い日本においての第一歩。」「『あれ、あの政治家おかしいんじゃないか』と、ちょっとでも考えるきっかけになればいいのではないかと思います」とコメントしている。 一方で、内田がTwitterにて「多様な意見がある。素晴らしいこと。人の数だけ意見が富んでる。素晴らしいこと。でも自分の映画を社会的にはしない。これは娯楽。娯楽映画で問題の第一歩を感じれればいい。社会問題は誰も見ない。映画祭やSNSでインテリ気取りが唸り議論するだけ。なので娯楽です。多くの人に観てほしい。それだけ」とコメントしたことに対しては非難や疑問の声があがった。後に内田は「最初の頃は、つい僕も感情的なコメント出したりして…本当に大人気なくて申し訳ないと思ってます。」と反省の弁を出している。
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