チベット人の抗議自殺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 04:24 UTC 版)
「チベット問題」の記事における「チベット人の抗議自殺」の解説
2011年3月に中国四川省アバ県で若い僧侶が焼身自殺を図ったのをきっかけにして、僧侶や市民による大規模な抗議活動が広がった。その後もチベット人居住地域で、中国政府のチベット弾圧に抗議するチベット仏教僧侶の焼身自殺が増加し、同年11月の時点で少なくとも11件にのぼっている。同年10月には20歳の尼僧も焼身自殺しているが、尼僧は初めてだと言う。 米国務省では同年11月4日の記者会見で、相次ぐチベット族僧侶らの焼身自殺に懸念を表明し、中国政府にチベット族に対する「非生産的な政策」を改めるよう要求していることを明らかにした。一方、中国政府は「焼身自殺はインドのチベット亡命政府の指示を受けたテロ」として非難している。また8月の焼身自殺事件で、抗議自殺した僧侶と一緒にいた僧侶は、自殺をそそのかしたとして教唆犯罪を問われ、懲役13年の判決を受けた。同年11月25日に人民日報ではダライ・ラマが焼身自殺を助長しているとする批判論評を掲載した。また、英国のガーディアン紙がチベット僧侶を庇護する論調の報道を行った事に対して、中国の駐英国大使館が「歪曲報道である」と書簡で抗議を行っている。 2012年1月6日、チベット人の男性と僧侶2名が中国政府の統治に抗議してそれぞれ焼身自殺を行った。僧侶は死亡、男性の容態は不明である。2011年3月から数えて、チベット人の抗議の焼身自殺は14人となった。 僧侶だけでなく、一般人や女性の焼身自殺も発生している。2012年3月5日、チベット亡命政府ガンデンポタンは3月3日に、マチュ県でチベットの女子学生が焼身自殺を行ったと発表した。アメリカの「ラジオ・フリー・アジア」は、この女学生に向かって漢族が石を投げつけていたと報道した。また、3月4日に、四川省で4人の子供がいる32歳の母親が、警察の派出所の前で焼身自殺したと発表した。 3月5日には、アバ・チベット族チャン族自治州で、18歳のチベット族男性が焼身自殺を行った。中国の当局者は「優れた少数民族文化を保護するのが我々の方針であり、宗教施設への出入りも自由だ」と述べ、民族統治について「問題は存在しない」と主張している他、焼身自殺はダライ・ラマ14世と、その一派によって画策された行動であると主張している。 2012年3月26日、胡錦涛国家主席がインドを訪れるのを前にして、インドに亡命しているチベット人が600人ほど集まり、抗議集会を開いていた。その中の男性1人が、突然灯油のようなものをかぶったあと体に火を放ち、全身にやけど負う重体となった。 このように抗議自殺が相次いでいる現状から、2012年3月22日、国連はチベット自治区の人権状況を調査する方針を明らかにした。国際連合人権高等弁務官事務所の特別報告官を中国に派遣する。亡命チベット人組織の一つ、チベット青年会議のハンガー・ストライキに応じた形であり、これを受け、チベット青年会議はハンガー・ストライキを停止した。
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