タバコモザイクウイルスとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 病気・健康 > 病気・けが > 病気 > 植物の病気 > タバコモザイクウイルスの意味・解説 

タバコモザイク‐ウイルス【tobacco mosaic virus】

読み方:たばこもざいくういるす

タバコの葉モザイク病起こすウイルス初め結晶化されたウイルスとして有名。


タバコモザイクウイルス

英訳・(英)同義/類義語:tobacco mosaic virus, TMV

タバコモザイク病原因ウイルスで、RNAゲノムをもつ。最初に結晶化されたウイルスとして有名。
「生物学用語辞典」の他の用語
生物の名前総称など:  スピリルム  スポロシスト  タイワンザル  タバコモザイクウイルス  ダーウィンフィンチ  ツメタガイ  ディクチオソーム

タバコモザイクウイルス [Tabaco mozaic virus: TMV]

 植物ウイルス代表的なウイルスで、このウイルス含めてオオバコランマメトマトキュウリアブラナなど多数のモザイクウイルスをタバモウイルス群(Tabamovirus)とよばれている。タバコモザイクウイルスは1892年D.イワノウスキー(ロシア)によって、細菌濾過器通過する微小な病原体としてみいだされ人類ウイルスの実体認めた最初ウイルスである。その後、W.M.スタンレー(アメリカ)がこのウイルスの結晶化成功して以来多くウイルスの研究発展した。このウイルス遺伝子である核酸として、らせん状のRNAをもち、その外側タンパク質から成る外被(カプシド)がある棒状ウイルスである。微生物学生化学電子顕微鏡技術などの進歩伴って、このウイルス核タンパク質であること、RNA部分感染性があること、RNAタンパク質部分から完全なウイルス粒子(ビリオン)が再構成されることなどが、他のウイルスの研究先駆けて明らかにされた。

タバコモザイクウイルス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/19 18:58 UTC 版)

タバコモザイクウイルス
タバコモザイクウイルスの電子顕微鏡写真
分類
: 第4群(1本鎖RNA +鎖)
: ヘペウイルス科
: トバモウイルス属
Tobamovirus
: タバコモザイクウイルス
Tobacco mosaic virus

タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus、TMV)は、タバコモザイク病を引き起こす病原体となる1本鎖+鎖型RNAウイルス。初めて可視化に成功したウイルスで、ウイルスの解明の初期の研究に大きな意義をもたらした[1]

タバコモザイク病

タバコモザイク病に罹ったタバコの葉

タバコモザイク病は、タバコモザイクウイルスによる植物感染症で、タバコなどの葉にモザイク状の斑点ができ葉の成長が悪くなる。

タバコモザイクウイルスには病原性の異なる多くの系統があり、異なる系統が同時には増殖しない(ただし、現在はこれらの系統は別とされることが多い)ことから、弱毒株をワクチンのように用いて強毒株による被害を防ぐ方法も試みられている。

歴史

初めて発見されたウイルスであり、最も詳細に研究された植物ウイルスでもある。

1886年、ドイツの農学者アドルフ・エドゥアルト・マイヤーがタバコモザイク病にかかったタバコの汁液を別の健康な葉に付けると感染することを報告[1]

1892年にはロシア出身の生物学者ドミトリー・イワノフスキーが細菌や真菌が通過できない素焼きフィルターをタバコモザイク病の感染因子は通過できることを発見し、これがウイルス学の起源といわれている[1]1898年にはマイヤーの共同研究者だったマルティヌス・ベイエリンクがタバコモザイクウイルスが化学的毒素とは異なる液体中の未知の分子であることを示した[1]

1935年には米国の研究者であるウェンデル・スタンリーがこのウイルスの結晶化に成功し、結晶化後も活性を失わず感染の能力を持つことを明らかにした[1]。彼はこの業績により1946年ノーベル化学賞を授与された[1]

1955年、H.フレンケル=コンラートとロブリー・ウィリアムズにより、精製されたTMVのRNAと、それを包むカプシド(コート)タンパク質が自動的に結合してウイルスとして機能することが示され、これが最も安定な構造(自由エネルギーが最低)であることが明らかになった。宿主細胞内でもこのメカニズムにより会合が起こると考えられる。

結晶学者ロザリンド・フランクリンはスタンリーのもとでX線回折による研究を行い、後にTMVの模型を造った(1958年)。彼女はTMVが中空で中に1本鎖のRNAが入っていると想像したが、それが正しいことは彼女の死後証明された。

TMVの構造

タバコモザイクウイルスの構造
1.ウイルス核酸、2.カプソマー(カプシドタンパク質)、3.カプシド
TMV Virus Super Resolution Mikroskopie

TMVのウイルス粒子は棒状の外観を示し、長さ約300 nm、直径約18 nm。外側のカプシド(コート)は莫大な数の同一タンパク質分子からなり、らせん状(1周あたり16.3タンパク質分子)に結合して棒状構造を形成している。このタンパク質分子は158アミノ酸からなり(アミノ酸配列は最後に示す)、4本のαヘリックスがループ(ウイルス粒子軸の側に突き出る)を介して連結している。

ウイルス粒子は内部に直径約4 nmの孔をもつ筒状であることが電子顕微鏡により示されている。RNAはその中の半径約6 nmの位置にらせんを作り、カプシドタンパク質により細胞のもつ酵素の攻撃から守られている。カプシドタンパク質1分子にRNAの3ヌクレオチドが結合している。

RNA上にはカプシドのほか、RNAポリメラーゼ、植物内移動に関与するタンパク質などがコードされている。

TMVは大量に得ることができ、数本のタバコ植物から簡単な操作でグラム単位のTMVが得られる。また動物には感染しない。これらの利点から、ウイルス粒子の会合・解離などに関する膨大な構造生物学分子生物学的研究が行われてきた。

カプシドタンパク質

カプシドタンパク質の分子構造

次に示すDahlemense株のカプシドタンパク質の名称は1972年ケミカルアブストラクツに1単語として登録されており(アミノ酸配列をそのまま書いたもの)、これは1185文字からなり、英語で文献に書かれたものとして3番目に長い単語とされている。なお、見やすいようにハイフンで改行しているが実際は一つながりの単語である。

Acetylseryltyrosylserylisoleucylthreonylserylprolylserylglutaminyl-
phenylalanylvalylphenylalanylleucylserylserylvalyltryptophylalanyl-
aspartylprolylisoleucylglutamylleucylleucylasparaginylvalylcysteinyl-
threonylserylserylleucylglycylasparaginylglutaminylphenylalanyl-
glutaminylthreonylglutaminylglutaminylalanylarginylthreonylthreonyl-
glutaminylvalylglutaminylglutaminylphenylalanylserylglutaminylvalyl-
tryptophyllysylprolylphenylalanylprolylglutaminylserylthreonylvalyl-
arginylphenylalanylprolylglycylaspartylvalyltyrosyllysylvalyltyrosyl-
arginyltyrosylasparaginylalanylvalylleucylaspartylprolylleucylisoleucyl-
threonylalanylleucylleucylglycylthreonylphenylalanylaspartylthreonyl-
arginylasparaginylarginylisoleucylisoleucylglutamylvalylglutamyl-
asparaginylglutaminylglutaminylserylprolylthreonylthreonylalanylglutamyl-
threonylleucylaspartylalanylthreonylarginylarginylvalylaspartylaspartyl-
alanylthreonylvalylalanylisoleucylarginylserylalanylasparaginylisoleucyl-
asparaginylleucylvalylasparaginylglutamylleucylvalylarginylglycyl-
threonylglycylleucyltyrosylasparaginylglutaminylasparaginylthreonyl-
phenylalanylglutamylserylmethionylserylglycylleucylvalyltryptophyl-
threonylserylalanylprolylalanylserine

近縁種

タバコモザイクウイルスが属するトバモウイルス属には、TMVに近縁なウイルスとして、トマトモザイクウイルス (ToMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス (CGMMV)、ペッパーマイルドモトルウイルス (PMMoV) があり、それぞれ、トマトモザイク病、キュウリ緑斑モザイク病、ピーマンモザイク病を引き起こす。

以前は、これら全てを含めてタバコモザイクウイルス、タバコモザイク病とされていた。その場合、たとえばToMVを特に指すには「TMV-トマト系」などと称した。

TMVを含め、それぞれタバコトマトキュウリピーマントウガラシ)にしか感染しないのではない。これらの作物以外では、メロンスイカアズキホウレンソウラッキョウなどにも感染する。これらを合わせると知られている限りで9、125種に達する。

出典

  1. ^ a b c d e f 見えざるウイルスの世界 東京大学医学部・医学部附属病院 健康と医学の博物館(2021年8月22日閲覧)p.24

関連項目




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「タバコモザイクウイルス」の関連用語

タバコモザイクウイルスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



タバコモザイクウイルスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
JabionJabion
Copyright (C) 2024 NII,NIG,TUS. All Rights Reserved.
微生物管理機構微生物管理機構
Microbes Control Organization Ver 1.0 (C)1999-2024 Fumiaki Taguchi
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのタバコモザイクウイルス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS