シンプレクティックフレアーホモロジー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 21:22 UTC 版)
「フレアーホモロジー」の記事における「シンプレクティックフレアーホモロジー」の解説
シンプレクティックフレアーホモロジー (SFHと略記する) は、シンプレクティック多様体とその上の非退化なシンプレクティック写像と結びついたホモロジー論である。シンプレクティック写像がハミルトニアンであれば、ホモロジーはシンプレクティック多様体のループ空間(の普遍被覆)の上のシンプレクティック作用(英語版)の研究から出て来る。SFH はシンプレクティック写像のハミルトニアンイソトピー(英語版)では不変である。 ここで、非退化とは、どの固定点でもシンプレクティック写像の微分の固有値には1がないことを意味し、この条件は固定点が孤立していないことを意味する。SFH はそのようなシンプレクティック写像の固定点によって生成される鎖複体のホモロジーである。そこでは微分(写像)が、実直線とシンプレクティック写像のトーラス写像(英語版)(mapping torus)の直積の中のある擬正則曲線(英語版)を数え上げる。これ自体は元の多様体よりも2次元大きな次元のシンプレクティック多様体で、概複素構造を適当に選ぶと、その中の穴のあいた(有限エネルギーの)正則曲線は、シンプレクティック写像の固定点に対応する写像トーラスの中のループに漸近的に近づく円筒形の端点を持っている。相対インデックスは固定点のペア毎に定義され、微分(写像)は相対インデックス 1 を持つ正則シリンダーの数を数える。 コンパクト多様体のハミルトニアンシンプレクティック写像のシンプレクティック フレアーホモロジーは、基礎となっている多様体の特異ホモロジーと同型である。このようにして、その多様体のベッチ数の和が、非退化なシンプレクティック写像の固定点の数に対するアーノルド予想の一つのバージョンで予想される下界を意味する。ハミルトニアンシンプレクティック写像の SFH もまた、量子コホモロジーと同値な変形されたカップ積であるパンツペアの積を持っている。積のバージョンでは、完全でないハミルトニアンシンプレクティック写像に対しても存在する。 多様体 M の余接バンドルについて、フレアーホモロジーは非コンパクトであるために、ハミルトニアンの選択に依存している。無限遠点で二乗になっているハミルトニアンに対して、フレアーホモロジーは M の自由ループ空間の特異ホモロジーになっている(このステートメントに対しては、様々なバージョンの証明がある。Viterboによるもの、Salamon-Weberによるもの、Abbondandolo-Schwarzによるもの、Cohenによるもの)。基礎となる多様体のループ空間のホモロジー上の位相的弦理論に対応する余接バンドルのフレアーホモロジーの上の作用素は、さらに複雑になっている。 フレアーホモロジーのシンプレクティックバージョンは、ホモロジカルミラー対称性予想の定式化の中で決定的な方法となっている。
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