ホモロジー代数学
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/10 19:55 UTC 版)

ホモロジー代数学(ホモロジーだいすうがく、英: homological algebra)は、一般の代数的な設定のもとでホモロジーを研究する数学の分野である。それは比較的新しい分野であり、その起源は19世紀の終わりの、組み合わせ論的トポロジー(代数トポロジーの前身)と抽象代数学(加群や syzygy の理論)の、主にアンリ・ポアンカレとダフィット・ヒルベルトによる研究にまでさかのぼる。
ホモロジー代数学の発展は圏論の出現と密接に結びついている。概して、ホモロジー代数はホモロジー的関手とそれから必然的に生じる複雑な代数的構造の研究である。数学においてきわめて有用で遍在する概念の1つはチェイン複体 (chain complex) の概念であり、これはそのホモロジーとコホモロジーの両方を通じて研究できる。ホモロジー代数は、これらの複体に含まれる情報を得、それを環、加群、位相空間や、他の 'tangible' な数学的対象のホモロジー的不変量の形で描写する手段を提供してくれる。これをするための強力な手法はスペクトル系列によって与えられる。
まさにその起源から、ホモロジー代数学は代数トポロジーにおいて非常に多くの役割を果たしている。その影響の範囲は徐々に拡大しており現在では可換環論、代数幾何学、代数的整数論、表現論、数理物理学、作用素環論、複素解析、そして偏微分方程式論を含む。K-理論はホモロジー代数学の手法を利用する独立した分野であり、アラン・コンヌの非可換幾何もそうである。
ホモロジー代数学の歴史
ホモロジー代数学は1800年代にトポロジーの1つの分野としてその最も基本的な形が研究され始めたが、Ext関手やTor関手のような対象の研究が独立した主題になるのは1940年代になってからであった[1]。
チェイン複体とホモロジー
チェイン複体 (chain complex) はホモロジー代数学の中心的な概念である。それはアーベル群と群準同型の列
5項補題は次のものである。2つの列が完全で、m と p が同型射で、l がエピ射で、q がモノ射であれば、n も同型である。
蛇の補題
任意のアーベル圏(アーベル群の圏や与えられた体上のベクトル空間の圏など)において、可換図式
を考える。ただし2つの列は完全で、0 は零対象である。すると a, b, c の核や余核に関連した完全列
二重に次数付けられたスペクトル列は把握するには途方もない量のデータをもっている。しかし、スペクトル列の構造を明確にする、一般的な視覚化のテクニックがある。3つの添え字 r, p, q がある。各 r に対し、グラフ用紙のシートを1枚もっていると想像しよう。このシートの上に、p を水平な向きに、q を垂直な向きにとる。各格子点に、対象
ホモロジー論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/05 10:19 UTC 版)
CW複体のホモロジー群の計算は、アルゴリズム的には境界行列(boundary matrices)のスミス標準形(Smith normal form)への変形問題に帰着するが、複体が巨大な場合に効率的に計算するには種々の障碍がある[要出典]。 位相的データ解析に関連して活溌に研究されている。 効率的な確率論的スミス標準形(Smith normal form)変形アルゴリズムが LinBoxライブラリに実装されている。 永続的ホモロジー(persistent homology)を計算するためのアルゴリズムがPerseus、TDAstats(R言語のパッケージ)等に実装されている。
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