ホモロジー群の構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 13:06 UTC 版)
「ホモロジー (数学)」の記事における「ホモロジー群の構成」の解説
ホモロジー群は以下のような手続きを経て作られる。 数学的対象、たとえば位相空間 X が与えられたとき、まず X の情報を抽出したチェイン複体 C(X) を構成する。チェイン複体はアーベル群や加群 C0, C1, C2, ... を境界作用素とよばれる群準同型 ∂n: Cn → Cn-1 でつないだもの ⋯ ⟶ ∂ n + 1 C n ⟶ ∂ n C n − 1 ⟶ ∂ n − 1 ⋯ ⟶ ∂ 2 C 1 ⟶ ∂ 1 C 0 ⟶ 0 , {\displaystyle \dotsb {\overset {\partial _{n+1}}{\longrightarrow \,}}C_{n}{\overset {\partial _{n}}{\longrightarrow \,}}C_{n-1}{\overset {\partial _{n-1}}{\longrightarrow \,}}\dotsb {\overset {\partial _{2}}{\longrightarrow \,}}C_{1}{\overset {\partial _{1}}{\longrightarrow \,}}C_{0}\longrightarrow 0,} である。ただし、0 は自明な群を表し、i < 0 に対しては Ci ≡ 0 と定義する。 さらに、境界作用素 2 つの合成はいつでも 0 であるという要求も付け加える。つまり、すべての n に対して、 ∂ n ∘ ∂ n + 1 = 0 {\displaystyle \partial _{n}\circ \partial _{n+1}=0} であるとする。右辺の 0 は群 Cn-1 の単位元への定数写像を意味する。このことは im(∂n+1) ⊆ ker(∂n) を意味する。 いま、各 Cn はアーベル群なので、im(∂n+1) は ker(∂n) の正規部分群である。さらに、この部分群を無視して考えたい。つまり、その差が im(∂n+1) に属するような 2 つの元は同値とみなし、ker(∂n) をその同値関係で分割するのである。X の n 次ホモロジー群 を剰余群(あるいは剰余加群) Hn(X) = ker(∂n) / im(∂n+1) によって定義する。また、ここでは ker(∂n) = Zn(X) と書き、im(∂n+1) = Bn(X) と書く。すると、 Hn(X) = Zn(X) / Bn(X) である。ホモロジー群の元をホモロジー類という。 上の 2 つの群 Zn(X) と Bn(X) は巨大な群であることが多く計算は難しい一方で、その商であるホモロジー群 Hn(X) を計算するには、さまざまな道具がある。 単体複体 X の 単体的ホモロジー群 Hn(X) は、各 n に対して C(X)n を X の n 単体全体で生成される自由アーベル群として得られる単体的チェイン複体 C(X) によって定義される。特異ホモロジー群は任意の位相空間 X に対して定義され、単体複体については単体的ホモロジー群と一致する。 チェイン複体が完全系列であるとは、(n + 1) 番目の写像の像が、常に n 番目の写像の核に一致することである。X のホモロジー群はしたがって、それから決まるチェイン複体が「どれだけ完全でないか」を測る量である。 コホモロジー群の定義も形式的には同様である。まず、コチェイン複体から始める。これはチェイン複体とほとんど同じものであるが、群のあいだをつなぐ矢印は n の減少方向ではなく n の増加方向を向いている。矢印を dn で表すことにすると、群 ker(dn) = Zn(X) および群 im(dn-1) = Bn(X) は同じように定義され、さらに同様にコホモロジー群 Hn(X) = Zn(X) / Bn(X) を得る。
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