写像の微分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/12 00:14 UTC 版)
数学の一分野、微分幾何学における多様体間の写像の微分(びぶん、英: differential)または全微分 (total differential) は、通常の解析学における全微分の概念を可微分写像に対して一般化するもので、可微分多様体間の可微分写像のある意味での最適線型近似を各点において与えるものである。より具体的に、可微分多様体 M, N の間の可微分写像 φ: M → N に対し、φ の x ∈ M における微分(係数) dφx は、x における M の接空間から φ(x) における N の接空間への線型写像として与えられる。
- 1 写像の微分とは
- 2 写像の微分の概要
- 3 ベクトル場の押し出し
- 4 関連項目
写像の微分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 03:09 UTC 版)
詳細は「写像の微分」を参照 2つの多様体の間の微分可能な関数は部分多様体の適切な概念や他の関連する概念を定式化するために必要である。f: M → N が m 次元の可微分多様体 M から n 次元の可微分多様体 N への微分可能な写像であれば、f の微分は写像 df: TM → TN である。これは Tf とも記され、接写像 (tangent map) と呼ばれる。M の各点においてこれは一方の接空間から他方への線型変換である: d f ( p ) : T p M → T f ( p ) N . {\displaystyle df(p)\colon T_{p}M\to T_{f(p)}N.} f の p での階数 (rank) はこの線型変換の階数である。 通常関数のランクは点ごとの性質である。しかしながら、関数が最大のランクを持てば、ランクは点の近傍で定数のままである。微分可能な関数は"通常"最大のランクを持つ。その正確な意味はサード (Sard) の定理によって与えられる。ある点で最大ランクの関数ははめ込みや沈めこみと呼ばれる: m ≤ n で、f: M → N が p ∈ M においてランク m を持てば、f は p でのはめ込み (immersion) と呼ばれる。f が M のすべての点ではめ込みであり像の上への同相写像であれば、f は埋め込みである。埋め込みは M が N の部分多様体であるという概念を定式化する。一般に、埋め込みは自己交叉や他の局所的でない位相的特異性を持たないはめ込みである。 m ≥ n で、f: M → N が p ∈ M でランク n を持てば、f は p での沈めこみ (submersion) と呼ばれる。陰関数の定理は f が p での沈めこみであれば M は p の近くで局所的に N と Rm−n の積であると述べている。正式に言えば、f(p) ∈ N の近傍における座標 (y1, ..., yn) と、p ∈ M の近傍において定義された m−n 個の関数 x1, ..., xm−n であって ( y 1 ∘ f , … , y n ∘ f , x 1 , … , x m − n ) {\displaystyle (y_{1}\circ f,\dotsc ,y_{n}\circ f,x_{1},\dotsc ,x_{m-n})} が p の近傍における M の局所座標系であるようなものが存在する。沈めこみはファイブレーション(英語版)とファイバー束の理論の基礎をなす。
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写像の微分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/07 06:28 UTC 版)
多様体上の関数の微分は、多様体から多様体への写像の微分へと拡張される。 M:a 次元 Cr 級多様体 N:b 次元 Cr 級多様体 として、Cr 級写像 f: M → N を考える。 M の中の曲線 φ :(− ε, ε) → M φ(0) = p ∈ M をとり、 p を含む座標近傍 (U;x1,…,xa) を取る。曲線 φ の t = 0 における接ベクトルは v ϕ = ∑ i = 1 a d x i d t ∂ ∂ x i {\displaystyle v_{\phi }=\sum _{i=1}^{a}{\frac {dx_{i}}{dt}}{\frac {\partial }{\partial x_{i}}}} と書ける。 ここで φ を f で N の中へ写した曲線 f ∘ ϕ : ( − ε , ε ) → N {\displaystyle f\circ \phi :(-\varepsilon ,\varepsilon )\to N} f(φ(0)) = q ∈ N と、 q を含む座標近傍 (V;y1,…,yb) を取る。同様に t = 0 における接ベクトルは v f ∘ ϕ = ∑ j = 1 b d y j d t ∂ ∂ y j {\displaystyle v_{f\circ \phi }=\sum _{j=1}^{b}{\frac {dy_{j}}{dt}}{\frac {\partial }{\partial y_{j}}}} となる。この接ベクトルの係数は、 M の局所座標系を用いると合成関数の微分により d y j d t ( 0 ) = ∑ i = 1 a ∂ y j ∂ x i d x i d t ( 0 ) {\displaystyle {\frac {dy_{j}}{dt}}(0)=\sum _{i=1}^{a}{\frac {\partial y_{j}}{\partial x_{i}}}{\frac {dx_{i}}{dt}}(0)} となることが分かる。行列を用いて書くと ( d y 1 d t ⋮ d y b d t ) = ( ∂ y 1 ∂ x 1 ⋯ ∂ y 1 ∂ x a ⋮ ⋱ ⋮ ∂ y b ∂ x 1 ⋯ ∂ y b ∂ x a ) ( d x 1 d t ⋮ d x a d t ) {\displaystyle {\begin{pmatrix}{\cfrac {dy_{1}}{dt}}\\\vdots \\{\cfrac {dy_{b}}{dt}}\\\end{pmatrix}}={\begin{pmatrix}{\cfrac {\partial y_{1}}{\partial x_{1}}}&\cdots &{\cfrac {\partial y_{1}}{\partial x_{a}}}\\\vdots &\ddots &\vdots \\{\cfrac {\partial y_{b}}{\partial x_{1}}}&\cdots &{\cfrac {\partial y_{b}}{\partial x_{a}}}\\\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}{\cfrac {dx_{1}}{dt}}\\\vdots \\{\cfrac {dx_{a}}{dt}}\\\end{pmatrix}}} となる。右辺の b × a 行列 J f := ( ∂ y 1 ∂ x 1 ⋯ ∂ y 1 ∂ x a ⋮ ⋱ ⋮ ∂ y b ∂ x 1 ⋯ ∂ y b ∂ x a ) {\displaystyle J_{f}:={\begin{pmatrix}{\cfrac {\partial y_{1}}{\partial x_{1}}}&\cdots &{\cfrac {\partial y_{1}}{\partial x_{a}}}\\\vdots &\ddots &\vdots \\{\cfrac {\partial y_{b}}{\partial x_{1}}}&\cdots &{\cfrac {\partial y_{b}}{\partial x_{a}}}\\\end{pmatrix}}} は関数行列(ヤコビ行列)である。それぞれの接ベクトルは p や q の周辺の様子を表しているが、 p の周辺が f によってどのように q の周辺にうつされているのか?を表現しているのが、この関数行列 Jfである。 こうして (df)p : Tp(M) → Tq(N) という対応ができ、この (df)p を f : M → N の p における微分という。つまり、微分というのは接ベクトル空間から接ベクトル空間への線型写像のことであり、微分を用いることによって写像は局所的には線型代数学的な扱いが可能になる。 (df)p の行列としての表示 Jf の階数を f の p における階数(rank) といい、 rankp(f) と書くと rankp(f) ≤ min(a,b) である。
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