シンプレクティック多様体とは? わかりやすく解説

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シンプレクティック多様体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/16 03:38 UTC 版)

数学におけるシンプレクティック多様体(シンプレクティックたようたい、symplectic manifold)は、シンプレクティック形式と呼ばれる非退化閉形式である 2-形式を持つ滑らかな多様体である。シンプレクティック多様体の研究分野はシンプレクティック幾何学シンプレクティックトポロジーと呼ばれる。シンプレクティック多様体は、古典力学の抽象的定式化であるハミルトン力学などにおいて多様体の余接バンドルとして自然に表れるもので、この分野に対して大きな動機付けを与えた。実際、系の取り得るすべての配位が成す集合を多様体としてモデル化すると、この多様体は系の相空間を記述する。

シンプレクティック多様体上の微分可能な実数値関数 H はエネルギー函数英語版(energy function)を与えることができ、これをハミルトニアンと呼ぶ。どのようなハミルトニアンに対してもハミルトンベクトル場が対応付けられる。ハミルトンベクトル場の積分曲線ハミルトン方程式の解曲線になる。ハミルトンベクトル場は、シンプレクティック多様体上のフロー(ハミルトンフロー、あるいは、シンプレクティック同相写像と呼ばれる)を定め、リウヴィルの定理によれば、ハミルトンフローは相空間上の体積要素を保存する。

動機

シンプレクティック多様体上の幾何学、その動機である古典力学(解析力学)との関係は、シンプレクティック幾何学も参照のこと。

シンプレクティック多様体は古典力学から発生していて、特に閉じた系の相空間の一般化である。[1]ハミルトン方程式が一組の微分方程式から系の時間発展を引き出せることと同じように、シンプレクティック形式からはハミルトン函数 H の微分である dH により系のフローを記述するベクトル場を得ることができる。ニュートンの運動方程式は線型微分方程式であるので、その写像も必然的に線型となる。[2]従って、線型写像 T* M → TM、(同じことであるが、 T* M ⊗ T* M の元)が必要となる。ω により T* M ⊗ T* M の切断を表すこととすると、ω が 非退化 であるということは、全ての微分 dH に対して一意にベクトル場 VH が存在し、dH = ω(VH,· ) を満たす。ハミルトニアンが積分曲線に沿って定数であることを要求するので、必然的に dH(VH) = ω(VH, VH) = 0 を得る。このことは ω が 交代的 であり、従って 2-形式であることを意味する。結局、必然的に ω は積分曲線のもとで不変であることとなり、つまり、 ω の VH に沿ったリー微分はゼロとなる。カルタンの公式英語版(Cartan's formula)を適用して、次の式を得る。

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シンプレクティック多様体 (K, ω) のラグランジュ部分多様体 L がはめ込み(immersion) i : L ↪ K(この i を ラグランジュはめ込み という)によって与えられるものとし、 π: K ↠ B が K のラグランジュファイバー構造とすると、合成写像 (π ∘ i): L ↪ K ↠ Bラグランジュ写像 と呼ばれる。このとき、 π ∘ i の境界値集合が焦線である。

二つのラグランジュ写像 1 ∘ i1): L1 ↪ K1 ↠ B1 および 2 ∘ i2): L2 ↪ K2 ↠ B2 が互いに ラグランジュ同値 であるとは、微分同相写像 σ: L1 → L2, τ: K1 → K2, ν: B1 → B2 が存在して、二つのラグランジュ写像と可換、かつ τ がシンプレクティック形式を保つことを言う[4]。式で書けば


シンプレクティック多様体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/31 09:19 UTC 版)

体積形式」の記事における「シンプレクティック多様体」の解説

すべてのシンプレクティック多様体(あるいは、実際すべての概シンプレクティック多様体(英語版)(almost symplectic manifold))は、自然な体積形式持っている。M がシンプレクティック形式 ω を持つ 2n-次元多様体であればシンプレクティック形式非退化性の結果、ωn はどこでも 0 にならない。この結果すべてのシンプレクティック多様体は向き付け可能である(実際向き付けなされている)。多様体がシンプレクティック多様体で、かつ、リーマン多様体であれば2つ体積形式は、多様体ケーラー多様体である場合一致する

※この「シンプレクティック多様体」の解説は、「体積形式」の解説の一部です。
「シンプレクティック多様体」を含む「体積形式」の記事については、「体積形式」の概要を参照ください。

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