コロナ加熱問題
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太陽の表面温度は約6000 °Cであるのに対し、太陽を取り囲むコロナは約200万 °Cという超高温であることが分かっているが、それをもたらす要因は太陽最大の謎とされた。1960年代までは太陽の対流運動で生じた音波が衝撃波へ成長し、これが熱エネルギーへ変換されてコロナを加熱するという「音波加熱説」が主流の考えだった。 1970年代からスカイラブ計画を通じてコロナのX線観測が行われたところ、コロナの形状は太陽の磁場がつくるループに影響を受けていることが判明し、ここから太陽磁場の影響による加熱が提唱された。しかし他にも磁場に伴うアルベーン波説や、フレアによる加熱説などもあり、結論には至っていない。
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コロナ加熱問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 05:34 UTC 版)
物理学の未解決問題なぜ、太陽のコロナは太陽表面よりも遥かに熱いのか? 太陽物理学におけるコロナ加熱の問題は、なぜ太陽のコロナの温度が太陽表面の温度よりも数百万 Kも高いのかという問題である。この現象を説明するためいくつかの理論が提案されているが、これらの候補の中のいずれが正しいのかの結論を出すのはまだ困難である。この問題は、ベングト・エドレンとヴァルター・グロトリアンが太陽のスペクトル中でFe IXとCa XIVの線を同定したときに初めて浮上した。この同定により、日食の際にコロナ中に見られる輝線が、未知の元素「コロニウム」ではなく、高温下でのみ高階電離されるこれらの既知の元素によるものであると判明したが、光球の6,000 Kと比べてコロナの温度は圧倒的に高く、この高温がどのように維持されているのかという新たな疑問を説明する理論が必要とされることとなった。この問題は主に、コロナへエネルギーがどのような形で運ばれ、その後、数太陽半径の範囲内でどのように熱に変換されるか、という点に集約される。 光球とコロナの間にある、温度が上昇する薄い領域を遷移層(遷移領域)と呼ぶ。この領域の厚さは数十 kmから数百 kmに過ぎない。太陽コロナを加熱するのに必要なエネルギーの量は、コロナの放射損失と、遷移層を通って彩層に向かう熱伝導による加熱の差として容易に計算できる。これは、太陽の彩層の表面積1平方メートル当たり約1 キロワット、つまり、太陽から逃げる光エネルギーの40000分の1の量である。 通常の熱伝導では、冷たい光球から熱いコロナにエネルギーを移動させることはできない。これは熱力学の第二法則に反するからである。これは、電球が周囲の空気の温度を電球のガラス面よりも高い温度まで上昇させることに喩えられる。したがって、コロナの加熱には、熱伝導以外の非熱的な過程でエネルギーを移動させる必要がある。これまで多くのコロナ加熱説が提唱されてきたが、いずれの理論も極端なコロナの温度を説明できていない。2020年現在最も有力な候補として残っているのは、波動加熱説とナノフレア加熱説の2つである。2006年に「ひので」が打ち上げられる前は、先行の宇宙機「ようこう」などでフレア、マイクロフレアが観測されていたことからナノフレア説が有力視されていたが、「ひので」がコロナ内を伝播する波動を空間分解して捉えたことから、一時期下火となっていた波動説が改めて見直されることとなった。 2012年、観測ロケットに搭載された高分解能コロナイメージャーによる軟X線波長での高解像度撮影(0.2秒角未満)により、コロナ内の強固にまかれた磁場のブレード(braid, 編組)が発見された。このブレードの再結合と分離が、活動領域のコロナを400万 Kまで加熱する主要な熱源として作用するのではないかと考えられている。静穏コロナ(約150万 K)の主な熱源は、電磁流体波に由来すると想定されている。
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