キッチン設計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/11 14:43 UTC 版)
「フランクフルト・キッチン」の記事における「キッチン設計」の解説
完成したフランクフルト・キッチンは幅1.9メートル奥行き3.4メートルという狭い二列構造の台所であった。リビングへつながるドアとは別に、窓と反対側の短い壁側に入り口があった。この入り口から見た(上記画像を参照)左側手前にコンロ、その隣にリビング・ダイニングルームへ続くスライド式ドアがあった。右側の壁には食器棚と流し台があり、正面に窓と調理台があった。コンロの横には料理したての熱い鍋が入る保温器があり、朝の出勤前に調理したものを日中保温して夕方帰宅してすぐに食べることが可能であった。流し台の横に壁に装着された水切り台があり、洗った皿は即座にスタンドに並べて乾燥することができた。冷蔵庫は無かったが、折りたたみ式アイロン台があった。このアイロン台は普段はスライド式ドア横の左側の壁に収納されているが、使用時には対面の流し台の縁で支えて橋渡しの状態にし、正面の調理台の椅子に座りながらアイロンをかけることができた。 台所の狭いレイアウトは、スペースが限られているというだけでなく、台所で動く際に必要な歩数を最小限に留めるというテイラー主義そのものを意識したデザインによる。スライド式ドアも台所と隣室のテーブルとの間の歩く距離を最低限に抑えている。フランクフルトキッチンは当時の一般的な台所面積の1/3程度で、作業動線も半分以下である。 フランクフルト・キッチンでは、小麦粉・砂糖・米などの一般食材は、紙袋ではなく専用のラベル付き収納箱に収められた。収納箱はアルミニウム製で、食材をそのまま鍋に流し込めるよう取っ手の反対側に注ぎ口がついている。またこの収納箱は引き出しになっており、通常は棚に入っている。こうして台所は常にきちんと片付けられ、どこに何があるか常時わかるよう整理されていた。また調理台には取り外し可能な引き出し状のゴミ箱が付いており、調理しながら野菜クズを落とし入れたり、作業がすべて終わった後で一度にまとめてゴミを捨てることができた。 1920年代に使用されていた一般的な調理器具類はリホツキーの考えた最適な仕事の流れにも狭いスペースにも合わなかったため、当時のドイツでは珍しかったコンロを含めた主要な器具および家具が組み込まれた。こうして世界初の作り付け台所が完成した。 また研究者がハエが青い表面を嫌うことを発見したため、木のドアと引き出しの正面は青く塗られた。リホツキーは穀物害虫の ミールワームが嫌うオーク材を小麦粉の容器に用い、調理台の表面には染み・酸・ナイフの跡が付きにくいブナを用いた。椅子は、自由度を最大限に高めるために脚輪のついた丸い回転椅子を選んだ。
※この「キッチン設計」の解説は、「フランクフルト・キッチン」の解説の一部です。
「キッチン設計」を含む「フランクフルト・キッチン」の記事については、「フランクフルト・キッチン」の概要を参照ください。
- キッチン設計のページへのリンク