オートバイにおけるキックスターター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/05 04:33 UTC 版)
「キックスターター」の記事における「オートバイにおけるキックスターター」の解説
自動車におけるクランク棒が比較的早い時期にスターターモーターに交代したのに対し、オートバイにおけるキックスターターはそれほど急速に衰退しなかった。 まず、キックスターターはクランク棒に対して比較的安全な始動手段であった。クランク棒での始動操作は屈んだ姿勢で手を用いるため、万一クランクシャフトの逆転が起こるとクランク棒で腕、胸、頭などを強打し、最悪の場合命に関わることもあった が、キックスターターは脚での操作のため、万一逆転が起ころうと、悪くともキックペダルで脚を強打して骨折する程度で済むからである。 また、登場当初のスターターモーターやその関連部品(バッテリーなど)が大型で重かったことも理由に挙げられる。全体として小型軽量が求められるオートバイでは、大型で重い電装品は避けられる傾向があった。排気量が自動車に比べて小さいため、キックスターターでも始動性が充分に良好であり、スターターモーターは必須の装備ではなかった。やがて技術の進歩により機器類が小型軽量になり、大排気量化や高出力化などによりキックスターターでは始動が難しい車種が増えたこともあって、スターターモーターが普及していった。過渡期には、スターターモーターとキックスターターの両方が装備された車種も多く存在した。 現在でも、キックスターターのみを装備する車種も極少数ながら存在し、スターターモーターと両方を装備する車種や、オプション装備としてキックスターターの設定がある車種も存在する。 一方、キックスタートでの始動を趣味の一環として楽しむ需要も少数ながら存在し、スターターモーターを持たない旧車はもちろんのこと、レトロ風の車種ではこの点を考慮してキックスターターを採用する例がいまだに存在する。 また、不具合や故障を起こす箇所を減らし、生産コストや運用コストを下げる目的で、敢えてキックスターターのみを装備する例がある。原動機付自転車のような小排気量車種、4ストロークよりも爆発間隔が短い2ストロークエンジンを搭載する車種など、比較的始動性の良好なものにこの傾向が強い。 予備の始動手段としてスターターモーターと共に装備する例もある。現在では、小排気量スクーターに類する車種において例が多い。自動変速機(オートマチックトランスミッション)の普及で押しがけができる車種が減り、かつ、小排気量ゆえにキックスタートが容易なこともあり、スターターモーターが作動しない場合の予備として有用性が高いことが理由である。 以上のような理由から、キックスターターを装備するオートバイは、現在でも製造販売されている。ただし近年では、自動車排出ガス規制や騒音規制法等の環境規制の強化により、オートバイでも燃料噴射装置をはじめとした電子化が進み、2ストロークエンジンを搭載する車種もほぼ生産終了となっていることから、趣味性の高い製品を除き、次第に減少していくものとみられるが、小排気量においては燃料噴射化後もキックスターターを装備する例があり、完全に廃れる様子はない。
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