オーストラリア経済の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/13 01:25 UTC 版)
「オーストラリアの経済」の記事における「オーストラリア経済の問題」の解説
オーストラリアは天然資源の高騰による貿易収支の黒字が為替レートを上昇させ労働コストの高騰を招き、最終的に製造業の衰退を起こす典型的なオランダ病である。2007年からBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興諸国の急速な経済成長を背景に、資源価格の高騰が発生した。オーストラリアの経済は国際収支は赤字であるが資源開発のための資本流入によってそれを賄う構造となっている。そのため経常赤字にもかかわらず高い経済成長が維持され、労働生産性が高まっていった。しかしながら人口が小さいが故に労働市場に余裕がなく、生産性の高い資源開発に引きずられる形で為替レートが高騰し労働コストの上昇を招いた。そのため高い労働コストの懸念から製造業の空洞化が起き、フォード・オーストラリアの2工場閉鎖(2016年10月まで)、GMホールデンの自動車生産終了(2017年末まで)に引き続き、2014年初にトヨタ自動車が自動車とエンジンの生産を2017年に終了する旨を発表し自動車の現地生産が皆無となった。また石油精製部門でも世界的なエネルギーの多角化と石油の生産量のピークアウトを受け、製油マージンが低下を招いた。オーストラリアでは消費市場も小さく高コストであるため閉鎖が相次いでおり製油の輸入金額は2014年には前年比14.9%増となった。 2012年には中国の成長が一巡し鉄鋼需要に陰りが見えたため原材料である鉄鉱石、石炭ともに下落を続け貿易収支が赤字となった。その後は中国経済が一時回復するも不動産投資規制への警戒感もあり資源価格の低下を輸出量を増大させることで賄っている。 恒常的な経常赤字を生み出すオーストラリア経済を支えているのは埋蔵資源の価値による資本流入に他ならない。逆に言えば技術の革新によって、マテリアルを含めた資源価値の低下が起きた場合は資本流入が止まり、経済に致命傷を与えかねないモノカルチャー経済であるといえる。特に近年では環境意識の高まりにより二酸化炭素削減が叫ばれ、排出量の規制が国際的な問題となっている。そのため、二酸化炭素排出量の市場化により世界的に石炭の需要に圧力がかかり続けると予想される。 農業はオーストラリアの主産業だが、そのために大量の水を必要としており、マレー川・ダーリング川水系をはじめとして各地で過剰取水などの問題を起こしている。また過剰な灌漑による土壌の塩害も深刻になっている。
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