コストの高騰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 05:19 UTC 版)
現在のSUPER GTの車両規定、いわゆるN-GT規定は日本独自の規定を盛り込んだため、FIA-GT選手権のFIA-GT規定及びル・マン24時間レース、ELMS、ALMSなどのLM-GT規定とは相容れない物となっており、交流戦すら事実上行えなくなっている。更に、SUPER GTの各カテゴリーの車両規定がほぼ毎年のように改訂されるため、各メーカー、チーム共にマシンの開発に掛かるコストが高騰の一途を辿っている。本来コスト低減を標榜しているはずの規定が、開発の激化とコスト高騰を招いているというジレンマに陥っている点も憂慮されている。 シャシのパイプフレーム化などのコスト削減策を講じても、それが全く奏功することなく、逆にマシン開発を激化させるという悪循環となっている。GT500に至っては最早プライベーターが参加出来る環境では無くなっており、近年ではSUPER GTから撤退するチームも多く現れている。2009年からはレース開催時の予選前日のテストを取り止め、予選・決勝の二日間のみの開催として、全体のランニングコストを抑制する措置を実施しているが、根本的な対策とはならず、デビューしたばかりのドライバーが実際にサーキットを走行する機会が減る事への懸念も残されている。 これらの問題を解決するため、GT500クラスはDTMとシャシーやエアロパーツ等を統合しコストを削減することを決定、2014年より実施された。2014年からSUPER GTで採用された、ガソリン仕様の直列4気筒ターボエンジン“NRE”は、将来的にDTMでも採用される予定となっている。 GT300クラスはFIA-GT3規定の車両レギュレーションを設定、プライベーターでも参戦出来るように改善したこともあり参戦台数が増加した一方、JAF-GTはベースとなる国産車が少ないことから参戦台数は僅かな台数に止まっている。この状況を憂慮したGTAは、販売される時点でほぼ完成品となっているFIA-GT3の改造余地は少ないことから、車両制作を含めた技術の伝承や国産バーツを活用する意味でもJAF-GT車両が必要とされたが、専用品であるモノコックを一から開発するには莫大なコストが掛かり、このままではJAF-GT車両が減少する恐れがあるため共通シャシーを使用するという“マザーシャシー案”が提示され、製造メーカーが童夢に決定、現代のCFRPを使用したモノコックは、材料・制作コストが非常に高いため、コストダウンのために作り方を工夫するなどして開発が行われている。このような経緯で導入されたマザーシャシーであるが、近年ではそれを扱うチームが急減してきている。原因としては、そもそも導入後からのトラブルが多発しているため経験のあるガレージ以外の対応が難しい反面それらを技術的にサポートできる人材が不足していること、マザーシャシー以外の部分を改造できる範囲が幅広いため、いくらでもつぎ込んで改造ができることから、本来想定をしていたコスト軽減の効果が余り発揮できていないこと、が挙げられる。マザーシャシーでチャンピオンを獲得したつちやエンジニアリングも2020年からはFIA-GT車に変更している。
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