オオミテングヤシ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/25 05:30 UTC 版)
オオミテングヤシ | |||||||||||||||||||||
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オオミテングヤシ Mauritia flexuosa
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Mauritia flexuosa L.f. | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||
オオミテングヤシ テングサケヤシ[1] ミリチーヤシ[2] アグアヘ アグア アルマジロナッツ |
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英名 | |||||||||||||||||||||
Ita palm[3] Tree-of-life[3] Aguaje Buriti Moriche Palm Morete Palm |
オオミテングヤシ (学名: Mauritia flexuosa )は、南アメリカ大陸のアマゾン熱帯雨林気候における低湿地の沼地[4]や、雨季に水没してしまうようなネグロ川の川沿い[5]に群落がみられるヤシ科テングヤシ属の高木である。別名テングサケヤシとも呼ばれる[1]。
特徴

成木は、滑らかな円柱状の幹で[3]、直径が約60cmほどあり[6]、樹高は凡そ30-35mほどになる。 葉柄が長さ約3.9mの円筒状で、基部の直径30cm頬度あり強靭である[3]。掌状葉の大きさは直径約1.5mほど[5]あり、基部まで深裂している[3]。葉の表側の色が濃緑色で、裏側は黄緑色である[3]。 雌雄異株であるが、雌株には両性花が混在することがある[3]。果実の直径は約8cmほどの大きさである[5]。
利用

果実を食用、果汁から果実酒、髄はパンの代用に用いられる[7]。 葉を水に浸しておくと白い丈夫な繊維が採取できる[5]。繊維は漁網、ハンモック等綱として用いられる[7]。 葉は屋根葺き用、幹は建材に用いられる[7]。 その有用性から1980年代頃には乱獲が危惧されるようになってきた[6]。
果実よりとれる食用油には、トコフェロール、カロテン、オレイン酸のトリグリセリドであるトリオレインといった栄養素が含まれる[8]。 また葉からの抽出物を分析すると、タンニン、フラボノイド、カテキン、ステロイド、トリテルペン、サポニン、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、フタル酸(1,2-ベンゼンジカルボン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、リノール酸(オクタデカン酸、Ω-3脂肪酸)、リノレン酸(オクタデカトリエン酸、Ω-6脂肪酸)、シトロネロール、フィトール、テルペンといった成分が含まれており、健康食品や化粧品などの応用に有用な可能性がある[9]。
油脂には植物性エストロゲンのプテロカルパン類(レスペフロリンG8、8-ヒドロキシ-ホモ-プテロカルパン)が含まれており、月経時における不定愁訴や月経前症候群の改善作用や、女性の美容効果で知られるプエラリアの代替を図った栄養補助食品への応用が期待される[10]。また8‐ヒドロキシエイコサペンタエン酸が脂肪燃焼や糖の取り込み促進に関与する受容体(PPARαなどペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)を活性化させる
ことから抗肥満作用の栄養補助食品への応用が期待される[10]。
脚注
- ^ a b テングサケヤシ.
- ^ 熱帯植物研究会 編「ミリチーヤシ」『熱帯植物要覧』(第3版)北野至亮、東京、1991年、528頁。ISBN 4-924395-03-X。
- ^ a b c d e f g 渡邊 1994.
- ^ ベネズエラ・ボリバル共和国大使館.
- ^ a b c d 湯浅 2012.
- ^ a b Virapongsea, Endressc & Gilmored 2017.
- ^ a b c kotobank-アマゾン川.
- ^ Albuquerque, Guedes & Alcantara Jr. 2005.
- ^ Oliveira & et al. 2016.
- ^ a b 健康産業新聞 2018.
参考文献
- 渡邊静夫 編「マウリティア属」『園芸植物大事典』 2巻、小学館、1994年4月20日、2564頁。 ISBN 4-09-305111-9。
- 日本大百科全書(ニッポニカ). “アマゾン川”. コトバンク. 2017年6月2日閲覧。
- 湯浅, 浩史『世界の葉と根の不思議:環境に適した進化のかたち』誠文堂新光社〈子供の科学★サイエンスブックス〉、2012年2月、76頁。 ISBN 978-4-41621211-0。
- Virapongsea, Arika; Endressc, Bryan A.; Gilmored, Michael P.; Christa Horne, Chelsie Romulof (2017-04). “Ecology, livelihoods, and management of the Mauritia flexuosa palm in South America”. Global Ecology and Conservation 10: 70–92. doi:10.1016/j.gecco.2016.12.005.
- Albuquerque, Marcos L. S.; Guedes, Ilde; Alcantara Jr., Petrus; Sanclayton G. C. Moreira; Newton M. Barbosa Neto; Daniel S. Correa; Sergio C. Zilio (Nov./Dec. 2005). “Characterization of Buriti (Mauritia flexuosa L.) oil by absorption and emission spectroscopies”. Journal of the Brazilian Chemical Society 16 (6a). doi:10.1590/S0103-50532005000700004. ISSN 1678-4790.
- Oliveira, Adriana Idalina; Mahmoud, Talal Suleiman; Nascimento, Guilherme Nobre; Silva, Juliana Fonseca; Pimenta, Raphael Sanzio; Morais, Paula Benevides (2016-07-26). “Chemical Composition and Antimicrobial Potential of Palm Leaf Extracts from Babaçu (Attalea speciosa), Buriti (Mauritia flexuosa), and Macaúba (Acrocomia aculeata)”. Scientific World Journal: 5. doi:10.1155/2016/9734181. PMC 4977413. PMID 27529077 .
- 「アグアヘ、女性向け新素材 プエラリア代替需要狙う」『健康産業新聞』2018年5月10日。2025年5月13日閲覧。
外部リンク
- “ベネズエラの概要:地理”. ベネズエラ・ボリバル共和国大使館. 2017年5月16日閲覧。
- “species Mauritia”. Metabolomics.JP. 2017年5月16日閲覧。
- Mauritia flexuosa - ブリタニカ百科事典
- “Mauritia flexuosa” (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2017年7月30日閲覧.
- “Mauritia flexuosa”. National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語).
- 佐竹利彦「テングサケヤシ」『日本大百科全書(ニッポニカ)』 。コトバンクより2023年11月21日閲覧。
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