イングソック体制下の階級構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 08:43 UTC 版)
「イングソック」の記事における「イングソック体制下の階級構造」の解説
イングソック体制下では、社会は三つの階級に分けられる。これらの階層は世襲のものではなく、上層階級の子息が必ずしも自動的に上層階級になるわけではない。 党内局(Inner Party):政策を決め、決定を行い、政府を動かしている。党とは彼らのことを指す。党の頭脳部であり、社会を動かすエリート階層・上層階級である。テレスクリーンを消す権限すら持つ。 党外局(Outer Party):政府のための事務仕事を行う中層階級である。党の手足にあたる。上層階級である党内局の潜在的な脅威とされ、テレスクリーンや密告などで最も厳重に監視されている階層でもある。 プロレもしくはプロール(Proles):労働者(プロレタリア)であり下層階級。人口の大半(85%)を占める。ほとんどはテレスクリーンすら持っておらず監視下にないが、党は彼らに必要な愛国心を注入する以外は政治教育などを行わず、酒、ギャンブル、スポーツ、セックス、プロレフィード(人畜無害な読み物やレコードなど)を与えて暇つぶしをさせている。 イングソックによれば、人類の歴史では上層階級・中層階級・下層階級が絶えず成立しており、中層階級が下層階級を味方につけて上層階級を倒し新たな上層階級となることの連続であったとされる。歴史上、下層階級が主人公になったことはなく、革命の主人公はいつも中層階級であった。もとは社会の専門職やテクノクラートたちであったとされる現在の党のエリートは、二度とこのような階級同士の争いや革命を起こらせないために容赦のない支配構造を精緻に設計した。彼ら新たな上層階級はイングソック体制により中層階級を抑圧し、不平等と非自由を永久のものとして、歴史の流れを止めてしまうことを目的としている。 党内局員のうち弱いものは排除され、党外局員に野心的なものがいれば党内局へ抜擢され骨抜きにされる。プロレから党への抜擢は現実的にはありえず、その中で才覚のあるものは思想警察に監視され消されるが、党や国家の危機などにおいては、いざとなればプロレの中から優秀な人物を抜擢することもやぶさかではないとされる。ここでいう階級は、血縁を基とする古い形のものではない。党はかつての社会主義指導者の世襲を冷ややかに見ており、おおむね支配が短命に終わった世襲的貴族よりも、何百年と続いたカトリック教会の選任制組織のようなものを念頭に置いて支配体制を築いている。党の目的は階層構造の固定と党自体の永続であり、党内局員の血統の永続などではない。 イングソックは、実態上は抑圧や独裁を行っているものの、政治宣伝上では「平等主義」をかかげている。現実には、何不自由なく暮らす党内局員のために、党外局員の一部やプロレは搾取され低い生活水準に甘んじているが、プロパガンダによればかつての資本主義体制下よりははるかに楽な暮らしをしているとされている。 階級間の関わりはほとんどないが、小説内ではプロレも党員も観に来ている夕方の映画館のことが描かれている。党外局員である主人公も、プロレ向けのパブに顔を出したり、党内局員であるオブライエンの住居に顔を出したりしている。
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