イヌの起源と日本列島におけるイヌ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/14 02:17 UTC 版)
「縄文犬」の記事における「イヌの起源と日本列島におけるイヌ」の解説
イヌの祖先種であるオオカミはユーラシア大陸・北アメリカに分布しており、1984年にはティム・グラットン=ブロック(英語版)により複数のオオカミ亜種から多元的にイヌが誕生したとする仮説が提唱された。さらに1997年にはカルレス・ヴィラ(Carles Vila)らが、現世のイヌとオオカミのミトコンドリアDNAのハプロタイプを系統解析し、同じくイヌが多元的に家畜化されたと発表した。 かつては、考古学的なイヌの資料は中近東において多く出土していることから、イヌは中近東でアラビアオオカミ(英語版)やインドオオカミ(英語版)から家畜化されたとも考えられていた。しかし現在[いつ?]では遺伝学的見地から約1万5,000年前の後期旧石器時代に東アジア地域でオオカミが家畜化され、具体的にはチュウゴクオオカミ(英語版)が東アジアにおけるイヌの家畜化に深く関与していた可能性が考えられている。ただし、これを補強する考古学的発見は十分でないことも指摘される。 日本列島では縄文時代にイヌの骨が出現する。日本列島におけるイヌの起源は不明であるが、西本豊弘は、縄文犬が後述する額段(ストップ)の少ない形態的特徴から南方の東南アジアを起源とし、南方系の縄文人に連れられて日本列島に導入されたとしている。ただし、西本は同時に中国内蒙古の仰韶文化期の石虎山遺跡や興隆溝遺跡から、縄文犬と共通する額段の少なさを持つイヌが出土していることも指摘している。 縄文時代の犬は総合研究大学院大学データーベースによれば2007年時点で397遺跡から出土している。関東地方が最も多く、全国から出土している。犬は縄文早期から出現し、縄文中期から縄文後期にかけて出土遺跡数・個体数が増加し、縄文後期には墓域に関わる出土事例が増加し、埋蔵事例も増える。 日本列島における埋葬された犬の発見例としては、2008年時点で愛媛県久万高原町の上黒岩岩陰遺跡からのものがある。同遺跡からは三点のイヌ骨が出土し、左側下顎骨破片から体高45センチメートル前後の中型犬と推定され、埋葬事例の最古期とされた 。そのほか、神奈川県横須賀市夏島町の夏島貝塚からは縄文早期後半の右下顎骨・歯、佐賀県佐賀市の東名遺跡からも縄文早期の資料が出土しており、いずれも上黒岩岩陰遺跡と同様の中型犬と推定されている 。埼玉県富士見市の水子貝塚では縄文前期の埋葬例があり、飼育されて家畜利用されていたという説がある。なお、上黒岩岩陰遺跡・夏島貝塚出土の骨は長らく行方が分からなくなっていたが、2011年3月慶応大(東京都)の考古資料収蔵庫で資料整理をしている際に発見され、放射性炭素年代測定により、縄文時代早期末から前期初頭(7200~7300年前)の国内最古の埋葬犬と結論づけられた 。 また縄文草創期に遡る可能性のある資料として、山形県高畠町日向洞窟遺跡から採集された大型軸椎がある。 縄文前・中期の犬の出土事例は少ないが、縄文早期と同様に中型犬の資料が断片的に出土している 。縄文後・晩期には犬の出土事例が増加する 。縄文後・晩期の犬は体高40センチメートル前後の小型犬で、頭蓋骨の前頭部と吻部の額段が少なくなる特徴を持つ 。縄文早期の東名貝塚出土のイヌ頭蓋骨も同様に吻部が少ない特徴を有し、日本列島で長く飼育されたイヌが島嶼化現象を起こし小型化したとも考えられている 。
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